好奇心のマインドフルネス入門 認定資格取得の参考に
ポジティブ心理学の強みの一つでもある「好奇心」、パーソナリティ心理学では、開放性の要素にもなっています。とりわけ創造性などに関わります。ナラティヴ・アプローチや創造性に関わるアプローチでも、好奇心は重要な要素です。
ここでは、好奇心をテーマとした、マインドフルネス法について注目したいと思いいます。なお「好奇心を伴うマインドフルネス(Curiosity-driven Mindfulness)」は、単に「注意を向ける」だけでなく、その注意を 好奇心をもって探究的に向ける ことが特徴です。
コンテンツ一覧
好奇心のマインドフルネス 実践法
① 好奇心のラベリング(Curiosity Labeling)
好奇心のマインドフルネス 実践法① 「好奇心のラベリング」 まとめ表
項目 | 内容 |
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概要 | 今この瞬間の身体感覚・感情・思考を、評価せずに「これは何だろう?」と好奇心を持って観察し、言葉でラベルをつける練習。 |
具体例 | 「胸の辺りがザワザワする…これは不安かな?緊張かな?それともワクワク?」 「頭が重い感じがするけど、これは疲れかな?集中している証拠かも?」 |
方法 | – 身体感覚や感情に意識を向ける- 「これはどんな感じだろう?」- 「どこからきているのかな?」- 「どんな色や形に例えられるだろう?」と問いかける- 言葉にしてみる |
効果 | ネガティブ感情からはなれ、開放性が高まり、感情の正確な把握や調整がしやすくなる(Kong, 2020) |
② 好奇心ジャーナリング(Curiosity Journaling)
項目 | 内容 |
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概要 | その日に興味をひかれたことや「なぜ?」と思った出来事を振り返り、書き出すことで好奇心を意識化し、自己理解を深める実践法。 |
具体例 | 「会議でAさんの発言が気になった。どんな背景があるのか今度聞いてみたい。」「通勤中に見た花が珍しかった。調べてみようと思う。」 |
方法 | – その日の終わりに時間をとる- 次のような問いを書き出す: ・今日はどんなことに興味をひかれたか? ・一番「なぜ?」と思った瞬間はいつか? ・新しく気づいたことは何か? |
効果 | 自己理解が深まり、学習意欲や創造性が高まる(Zada et al., 2023) |
③ 好奇心スキャン(Curiosity Body Scan)
項目 | 内容 |
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概要 | 通常のボディスキャンを応用し、身体感覚を好奇心をもって細かく探究することで、感覚の質や変化を観察する実践法。 |
具体例 | 「肩が少し重い感じ。波のように強くなったり弱くなったりするな。」「お腹がチクチクするけど、温度はどうだろう?冷たい?温かい?」 |
方法 | – 静かに座る or 横になる- 体の各部位に順番に意識を向ける- 「この感覚はどんな質だろう?」- 「変化する様子を観察してみよう」と問いかける |
効果 | 身体感覚と感情のつながりを理解し、ストレス軽減や自己理解の深化につながる(Bluth & Eisenlohr-Moul, 2017) |
④ 好奇心で聴く(Curious Listening)
項目 | 内容 |
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概要 | 人の話を聞く際、相手の感情や言葉の選び方の背景に好奇心を向けて探る聴き方。単に内容を聞くのではなく、その人の心情や文脈を想像しながら耳を傾ける姿勢。 |
具体例 | – 「その話を選んだのには、どんな背景があるんだろう?」 – 「今その言葉を使うのは、どんな気持ちが隠れているのかな?」 – 「それを話そうと思ったきっかけは何だったんだろう?」 |
方法 | – 相手の話をさえぎらず、最後まで聴く- 言葉だけでなく、表情・声のトーン・間(ま)なども観察する- 疑問に思ったことを、相手が答えやすい問いかけで確認する- 評価や解釈を急がず、純粋な好奇心を保つ |
効果 | – 共感力が高まる- 相手への理解が深まり、信頼関係が強化される – 対話の質が高まり、相手も安心して話せるようになる(Bieling et al., 2012; Settepani, 2023) |
⑤ 好奇心呼吸法(Curiosity Breathing)
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項目 内容 概要 呼吸に意識を向け、空気の温度や息のリズムなど細かな感覚を観察する方法。身体感覚に集中することで、意識の散漫(マインドワンダリング)を抑え、集中力を高めるマインドフルネスの実践。 具体例 – 「吸うとき、少し冷たくて心地いい風が鼻を通る。」
– 「吐く息が温かくて、ゆっくり流れていく感じがする。」- 「息が少し短くなっていることに気づく。」方法 – 静かな場所で姿勢を整える- 呼吸をコントロールせず自然に任せる
– 空気の温度、流れ、息の長さやリズムなど細かい感覚を探るように観察する- 意識がそれたら、やさしく呼吸に戻す効果 – マインドワンダリング(雑念)が減少する- 集中力が高まる- 心が落ち着き、リラクゼーション効果が得られる(Tan et al., 2021)
⑥ 5つの好奇心問い(Five Curious Questions)
項目 | 内容 |
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概要 | 出来事や感情に対して、自分自身に探究的な質問を投げかけるセルフ・リフレクションの方法。自分の内面を深く観察し、意味づけを変えることでレジリエンスを高めるマインドフルネス的実践。 |
具体例 | – 「仕事で失敗したとき:どんな感覚がある? → 胸が苦しい何が一番気になる? → 周りの目どんな意味を感じる? → 成長のチャンスかも。」- 「人と衝突したとき:どんな感情? → 怒りと悲しみ何に興味がわく? → 自分の正当性か、相手の考えか」 |
方法 | – 静かに心を落ち着ける- 以下の問いを順に自分に投げかける: ① 何が起きているのだろう? ② どんな感覚や感情がある? ③ 何に一番興味がわく? ④ どんな意味があると感じる? ⑤ 次にどんな一歩を試してみたい?- 出てきた答えを批判せず受け止める |
効果 | – ネガティブな経験の意味づけが変わり、視野が広がる- レジリエンス(心の回復力)が高まる – 自己理解が深まる(Tan et al., 2021) |
ポイント
✅ 好奇心は「知りたい」という感覚だけでなく、評価を手放し、柔らかく探る姿勢を持つことが重要。
✅ ネガティブ感情や不快な体験にも「好奇心で」向き合うと、それらが和らいでいく。
✅ 簡単な問いかけや短い観察から始めるのがおすすめ。
ポイント
好奇心を伴うマインドフルネスとは、**「何が起きているのかを、評価せずに、興味を持って観察する」**ことの実践です。毎日の生活の中で、小さなことから「なぜ?」と問いかけるだけでも、ストレス軽減、学び、創造性、共感の力が育まれていきます。
最後に、学術的な視点でまとめてみたいと思います。なお、上記の内容も以下の内容を下にわかりやすくまとめた内容になってなっています。
好奇心を伴うマインドフルネス(好奇心のマインドフルネス)は、ストレス軽減、レジリエンス向上、創造性や学習意欲の促進、意味のある人生の実感、共感力の向上など、さまざまな心理的・社会的効果が報告されています。特に、好奇心を持って現在の経験に注意を向けることが、ウェルビーイングや学習、創造性、共感力の向上に寄与することが明らかになっています。
好奇心のマインドフルネスの主な効果
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ストレス軽減・レジリエンス向上
好奇心や探究心を含むマインドフルネス実践は、ストレスや抑うつ症状の軽減、レジリエンス(回復力)の向上、感謝や好奇心・探索行動の増加に関連しています(Bluth & Eisenlohr-Moul, 2017)。 -
意味のある人生の実感
マインドフルネスは「経験への開放性」や「好奇心」を媒介して、人生の意味の実感を高めることが示されています。好奇心はマインドフルネスと人生の意味をつなぐ重要な要素です(Tan et al., 2021)。 -
学習・動機づけ・感情調整
好奇心を含むマインドフルネスは、学習における動機づけや感情・認知の調整力を高める効果があり、自己受容やネガティブ感情への開放性とともに、学習成果や自己調整力の向上に寄与します(Kong, 2020)。 -
創造性・職場での効果
職場においても、好奇心とマインドフルネスの組み合わせは創造性を高めることが示されており、好奇心が新しいアイデアの発想を促し、マインドフルネスがその効果を強めます(Zada et al., 2023)。 -
共感力の向上
好奇心や「デセンタリング(自分の思考や感情を客観的に観察する力)」の高まりは、共感力や他者への理解を深めることにもつながります(Bieling et al., 2012; Settepani, 2023)。
効果のまとめ表
効果 | 関連する研究 | 内容の要約 |
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ストレス軽減・レジリエンス | (Bluth & Eisenlohr-Moul, 2017) | 好奇心を含むマインドフルネスでストレス減少、回復力向上 |
人生の意味の実感 | (Tan et al., 2021) | 好奇心がマインドフルネスと人生の意味を媒介 |
学習・動機づけ | (Kong, 2020) | 好奇心が学習意欲や感情調整力を高める |
創造性 | (Zada et al., 2023) | 好奇心とマインドフルネスが創造性を促進 |
共感力 | (Bieling et al., 2012; Settepani, 2023) | 好奇心の高まりが共感力や他者理解を向上 |
まとめ
好奇心を伴うマインドフルネスは、ストレス軽減やレジリエンス向上だけでなく、学習や創造性、人生の意味の実感、共感力の向上など、多面的な心理的・社会的効果をもたらします。好奇心を持って今この瞬間に注意を向けることが、より豊かな人生や人間関係、学びの促進に役立つといえるでしょう。
References
Bluth, K., & Eisenlohr-Moul, T. (2017). Response to a mindful self-compassion intervention in teens: A within-person association of mindfulness, self-compassion, and emotional well-being outcomes.. Journal of adolescence, 57, 108-118. https://doi.org/10.1016/j.adolescence.2017.04.001
Tan, C., Hashim, I., Pheh, K., Pratt, C., Chung, M., & Setyowati, A. (2021). The mediating role of openness to experience and curiosity in the relationship between mindfulness and meaning in life: evidence from four countries. Current Psychology, 42, 327-337. https://doi.org/10.1007/s12144-021-01430-2
Kong, L. (2020). Mindfulness, volition and motivation in learning. **. https://doi.org/10.32658/10497//22622
Zada, M., Khan, J., Saeed, I., Zada, S., & Jun, Z. (2023). Curiosity may have killed the cat but it has the power to improve employee creativity. Current Psychology, 1-15. https://doi.org/10.1007/s12144-022-04171-y
Bieling, P., Hawley, L., Bloch, R., Corcoran, K., Levitan, R., Young, L., MacQueen, G., & Segal, Z. (2012). Treatment-specific changes in decentering following mindfulness-based cognitive therapy versus antidepressant medication or placebo for prevention of depressive relapse.. Journal of consulting and clinical psychology, 80 3, 365-72. https://doi.org/10.1037/a0027483
Settepani, M. (2023). The Effect of Mindfulness Meditation on Mu-rhythm Suppression and Pain Empathy. **.