初めての人と話すコツ・ポイント②ウェルビーンを高める対話 ポジティブ心理カウンセラー入門
Counselor

【目的】先日、講座で、初めての方と話すのが不安・心配だったという話をお伺いしました。そこで、良好な関係を築くためには、対話が必要であり、カウンセリングやコーチングを実践するコミュニケーションのメリットを理解することで、対話力、カウンセリング力、コミュニケーション力が高まる可能性を高めたいというのが今回のテーマとなります。
コンテンツ一覧
💬 対話の力:話すことが心と体を元気にする理由
― 科学が明らかにする「つながり」と「幸福」の関係 ―
🌱 はじめに:なぜ「人と話すこと」が健康と幸福を左右するのか
「人と話すこと」は、単なるコミュニケーション以上の意味を持っています。
それは、心の安定・体の健康・学びの質・人間関係の豊かさを支える、私たちの“生命維持装置”のような行為です。
近年の心理学・社会学・教育学の研究から、
人との対話が幸福感・健康・成長にどのような好影響をもたらすのかが、科学的に明らかになってきました。
本記事では、その中でも特に注目される3つの側面――
① 心理的・社会的な幸福感、② 健康と生活の質、③ 学びと成長――に焦点を当てて解説します。
🧠 1. 心理的・社会的メリット:話すことで「心」が整う
💬 対話がもたらす幸福と自尊心の回復
他者との会話や助け合いは、自尊心や生きがいを高める最も自然な方法です。
高齢者を対象とした研究(妹尾 & 高木, 2004)では、日常の何気ない会話が
「心の安定」と「社会との一体感」を育むことが明らかにされています。
また、Furuichi & Kim (2021) の調査では、旅行や余暇活動を通じた交流が
**“生き生きとした交流”**を生み出し、QOL(生活の質)を大きく高めると報告されています。
💡 ポイント:
話すことは「自分を世界とつなぐ行為」。
小さな会話が、孤独の防止と心の回復に直結します。
💓 2. 健康と生活の質:会話が「免疫力」を高める?
🩺 コロナ禍が教えてくれた“会話の必要性”
Hirai et al. (2021) の調査によると、
新型コロナウイルス流行下で人との会話機会が減った人ほど、身体的・精神的な不調が増加しました。
一方で、日常的に人と話していた人は、心身の健康を維持しやすく、
早期に不調に気づく傾向が見られました。
つまり、「人と話すこと」が、**心身のバランスを保つ“予防医療”**のような働きをしているのです。
💼 職場での「雑談力」がチームを救う
Ishii (2020) の研究では、職場のちょっとした雑談やクラブ活動が
スタッフ同士の信頼関係を強め、チームワークを高めることが示されています。
これにより離職率が下がり、組織の活力が向上することも分かっています。
💬 「雑談なんて時間の無駄」と思われがちですが、
実は人間関係の潤滑油であり、健康的な職場文化をつくる基盤です。
📚 3. 学びと成長:対話は「思考を磨く鏡」
教育心理学の分野でも、対話の価値が注目されています。
董莊敬 (2024) と Minami (2024) の研究では、
対話的な学びを取り入れた授業が、論理的思考力・自己反省力・チーム協働力を高めると報告されています。
学生同士が意見を交わすことで、単なる知識の暗記から脱し、
「自ら考え、他者の考えを受け入れ、協働して解決する」学びが生まれるのです。
🎓 対話は「思考の筋トレ」。
一人で考えるより、誰かと話すことで“深い理解”が生まれます。
🌈 対話がもたらす多面的なメリット(まとめ)
| メリット | 対象・場面 | 主な研究 |
|---|---|---|
| 💖 心理的幸福感・自尊心 | 高齢者、地域交流 | 妹尾 & 高木 (2004); Furuichi & Kim (2021) |
| 🌿 QOL(生活の質)の向上 | 高齢者、余暇活動 | Furuichi & Kim (2021) |
| 🩺 心身の健康維持・不調予防 | 一般、感染症流行下 | Hirai et al. (2021) |
| 💼 チームワーク・離職防止 | 職場、福祉施設 | Ishii (2020) |
| 📘 学習・論理的思考力の向上 | 教育現場、学生 | 董莊敬 (2024); Minami (2024) |
🔚 結論:対話は“幸福をつくる技術”
これらの研究から明らかになったことはシンプルです。
**人と話すことは、心を癒やし、体を整え、人生を豊かにする「人間の根源的スキル」**だということ。
日常のちょっとした挨拶、職場での雑談、授業での意見交換——
そのすべてが、**孤立を防ぎ、信頼を築き、学びと成長を支える“希望の回路”**になります。
だからこそ、今こそ私たちは「対話すること」にもう一度、価値を見出すべき時なのです。
📖 参考文献
- 妹尾, 高木 (2004). 高齢者の自尊心と幸福感に関する研究.
- Furuichi, T., & Kim, S. (2021). Interpersonal Exchange and QOL in Older Adults.
- Hirai, H., et al. (2021). Geriatrics & Gerontology International.
- Ishii, Y. (2020). 職場コミュニケーションとチームワークの研究.
- 董莊敬 (2024). 教育現場における対話的学習の効果.
- Minami, A. (2024). Reshaping the Secondary ESL Classroom: LD Journal.
投稿者プロフィール

- 監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
- 徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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