「知っていることよりも,できることが重要。」「知識は正しく活用できることが重要」(ソクラテス)

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「知っていることよりも,できることが重要。」(マーシャル・ゴールドスミス),また,「知識は正しく活用できることが重要」(ソクラテス)に。

動画やAI,通信講座など知っている人は増えていますが,「知っていることと,できること」は,違うので気をつけておきたいです。もちろん知っていることは大切ですが,行動を起こせるかが重要です。例えば,感謝・愛情・思いやりも思っているだけ,実践しなければ相手に伝わりません。

当協会が,通信講座や動画ではなく,実践をこだわるのはその理由があるためです。

カウンセラーの視点から、この「知っていること」と「できること」の違いについて、より臨床的・実践的に掘り下げてみましょう。

カウンセリングの現場で見える「知行ギャップ」の現実

クライアントに起こる「知っているのにできない」葛藤

カウンセラーとして日々目の当たりにするのは、多くのクライアントが既に「答え」を知っているという事実です。

典型的な例:

  • 「ストレス解消には運動が良いと知っています。でも、できないんです」
  • 「怒りをコントロールする方法は本で読みました。それでも爆発してしまうんです」
  • 「子どもを褒めるべきだとわかっています。でも、つい叱ってしまって…」

この「知っているのにできない」苦しみこそが、多くの人を悩ませる核心です。カウンセラーの役割は、知識を提供することではなく、知識と行動の間にある見えない障壁を一緒に乗り越えることにあります。

なぜ「知っている」だけでは変われないのか——カウンセリング的理解

1. 感情と身体が追いついていない

頭では理解していても、感情や身体がまだその変化を受け入れていないことがあります。

  • 不安や恐れが行動を阻む
  • 過去の体験が身体に刻まれたトラウマ反応
  • 無意識の抵抗や防衛機制

カウンセリングでは、認知だけでなく、感情と身体を統合するプロセスを大切にします。

2. 環境やシステムの制約

個人が知識を持っていても、周囲の環境がそれを許さないことがあります。

  • 職場の文化や人間関係
  • 家族のダイナミクス
  • 経済的・時間的制約

カウンセリングでは、個人だけでなく関係性やシステム全体を視野に入れます。

3. 深層にある信念やスキーマ

表面的な知識の下には、長年培われた深い信念があります。

  • 「私には価値がない」
  • 「人は信用できない」
  • 「完璧でなければならない」

こうしたコア・ビリーフが変わらない限り、知識は行動に結びつきません。

カウンセラー自身の「知っている」と「できる」

実は、この問題はカウンセラー自身にも当てはまります。

教科書的知識の限界

カウンセリング理論や技法を学んでも、実際の面接室では:

  • クライアントの沈黙に耐えられず、不安から余計なことを話してしまう
  • 教科書通りの「受容」を頭で理解していても、判断や評価が漏れてしまう
  • 適切な問いかけの「型」は知っていても、その瞬間に適切な言葉が出てこない

臨床経験を通じた「体得」

何百時間ものスーパービジョンと実践を経て、初めて:

  • クライアントの非言語的なサインを感じ取れるようになる
  • 自分の内側に起こる逆転移に気づき、扱えるようになる
  • 沈黙の意味を読み取り、適切なタイミングで介入できるようになる

これは身体知であり、臨床的直観であり、マニュアルには載っていない領域です。

「問い」のスキルをカウンセラー視点で見ると

効果的な問いかけは、カウンセリングの中核スキルの一つです。しかし:

知識レベルの問い: 「オープンクエスチョンを使いましょう」 「なぜ、ではなく、何が、どのように、と聞きましょう」

実践レベルの問い:

  • クライアントの微細な表情の変化を捉えながら
  • 自分の中に起こる共感的な感覚を感じながら
  • 相手の防衛を刺激しない言葉の選択をしながら
  • 今この瞬間に最も必要な問いを、適切なトーンと間で投げかける

この差は、何年もの実践と省察の積み重ねによってのみ生まれます。

変化のプロセスに寄り添う

カウンセラーとして私たちが理解しているのは、変化には時間がかかるということです。

プロチャスカの変化ステージモデルに見られるように:

  1. 前熟考期(問題と認識していない)
  2. 熟考期(変わりたいと思い始める)
  3. 準備期(知識を集める)
  4. 実行期(試してみる)
  5. 維持期(継続する)

多くの人は「準備期」で止まっています。知識を集め、セミナーに参加し、本を読む。しかし、実行期への一歩が踏み出せない

カウンセラーの役割は、この一歩を共に踏み出すこと。失敗しても安全な場所で、何度でも試せる関係性を提供することです。

「安全な実験の場」としてのカウンセリング

カウンセリング室は、失敗が許される練習場です。

  • 新しい対人パターンを試してみる
  • 抑えてきた感情を表現してみる
  • 避けてきた話題に触れてみる

ここで小さな成功体験を積み重ね、それを現実の生活に少しずつ転移させていく。これが体験的学習のプロセスです。

実践へのこだわりが持つ臨床的意味

あなたが「実践」にこだわる理由は、カウンセラーとして本質的に正しいアプローチです。

なぜなら:

  1. 体験なしに内在化は起こらない ——知識は頭に留まり、行動は変わらない
  2. 関係性の中でのみ対人スキルは育つ ——一人で学べることには限界がある
  3. フィードバックが学習を加速する ——自分の盲点に気づくには他者の目が必要
  4. 感情的な学習が最も強力 ——体験を伴った学びは記憶に深く刻まれる

カウンセラーからのメッセージ

もし今、あなたのクライアントや周囲の人が「知っているのにできない」と悩んでいたら:

責めないこと。 それは意志の弱さではなく、人間の自然な姿です。

プロセスを信頼すること。 変化には時間がかかります。小さな一歩を認めましょう。

体験の場を提供すること。 安全に試せる環境、失敗を学びに変えられる関係性こそが、真の変化を生みます。

あなた自身が実践者であること。 カウンセラー自身が学び続け、試行錯誤し、自己開示することで、クライアントも「やってみよう」と思えるのです。


知識は地図です。しかし、地図を見るだけでは目的地には着きません。

実際に歩き、転び、立ち上がり、また歩く——その旅路に寄り添うのが、カウンセラーの仕事です。

あなたの「実践へのこだわり」は、まさにこの本質を体現しているのだと思います。

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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