ポジティブ心理学とコーチング心理学のカウンセリング心理学への統合
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ポジティブ心理学とコーチング心理学のカウンセリング心理学への統合
当協会のコンセプトとなっている文献をわかりやすくしました。
Grant & Palmer (2015) による論文『Integrating positive psychology and coaching psychology into counselling psychology』
この文書は、Anthony M. Grant氏とStephen Palmer氏による論文の要点をまとめたものです。この文献は、カウンセリング心理学がポジティブ心理学とコーチング心理学の知識とスキルをより明確に取り入れることの重要性を論じています。ポジティブ心理カウンセラー協会の設立の経緯となっている一つのコンセプトになっています。
論文の概要
本論文は、カウンセリング心理学者がクライアントの心理的機能とウェルビーイングを向上させ、有意義な目標達成を支援するために、ポジティブ心理学とコーチング心理学の知見を積極的に活用すべきであると主張しています。これにより、より柔軟で効果的な、エビデンスに基づいた支援が可能になると結論付けています。
支援専門職におけるパラダイムシフト
過去20年間で、支援専門職の分野では大きなパラダイムシフトが起きています。この変化は、以下の二つのアプローチの対比として説明できます。
* 従来のモデル: 機能不全を治療・是正することを主目的とする、還元主義的な診断医療アプローチ。
* 新しいモデル: 人々が自己を開花させ、成長し、仕事や私生活で個人的に有意義な目標を達成するための条件を整えることを主目的とするアプローチ。
論文では、このどちらの立場を取るかが、専門家がクライアントとどのように関わるか、専門家の思考様式、そしてクライアント自身への影響に大きな違いをもたらすと指摘しています。

ポジティブ心理学とコーチング心理学の定義と役割
論文は、カウンセリング心理学が取り入れるべき二つの分野を次のように定義しています。
* ポジティブ心理学: 個人、グループ、組織の「繁栄(flourishing)」や最適な機能に貢献する条件やプロセスに焦点を当てます(Gable & Haidt, 2005)。
* コーチング心理学: クライアントの私生活や仕事の領域における目標達成、ウェルビーイング、パフォーマンスの向上を主目的とします(Grant & Palmer, 2002より改変)。
これらのアプローチは、クライアントのウェルビーイング向上、メンタルヘルスの問題解決、目標達成を支援する効果的な手段であることが示されています。
統合の必要性
カウンセリング心理学がこれらの分野と連携する必要がある理由は、多岐にわたります。

1. 国際社会からの強い需要
一般の人々は、ウェルビーイングを高め、個人的・ビジネス上の目標を達成するための、エビデンスに基づいた方法論を明確に求めています。しかし、カウンセリング心理学という学問・応用分野は、伝統的にこれらの課題に効果的に取り組んでこなかったため、資格が不十分な可能性のある他の専門家がその需要を満たす余地を与えてしまっています。
2. 政府の関心
ウェルビーイングへの関心は国民だけにとどまりません。英国では、政府や非政府組織が出資する「What Works Centre for Well-being」が設立され、国や地方自治体、企業などがウェルビーイング向上のために何ができるかを研究しています。ポジティブ心理学は、個人からコミュニティレベルまでを対象とするため、このような政策プロセスに有益な情報を提供できます。
3. カウンセリング心理学者の理想的な立ち位置
論文は、カウンセリング心理学者が、国民が求めるポジティブ心理学およびコーチング心理学のサービスを提供する上で「理想的な立場にいる」と繰り返し主張しています。
統合への障壁とそれに対する見解
統合にはいくつかの潜在的な障壁が考えられますが、論文はそれらに対して反論しています。
理論的な緊張
* 障壁: カウンセリング心理学者の中には、ポジティブ心理学やコーチング心理学を解決志向や認知行動療法の枠組みと見なし、自身の理論的立場(例:人間性中心、精神力動的)とは相容れないと考えるかもしれません。
* 見解: コーチング心理学で最も一般的なのは解決志向・認知行動療法の枠組みですが、実際には人間性中心、アドラー派、ゲシュタルト、精神力動的、システムズアプローチなど、非常に幅広い理論的視点から実践されています。これらの多様なアプローチを統合する方法については、すでに多くの学術研究が存在し、カウンセリング心理学者が参考にすることができます。
診断医療モデルとの対立
* 障壁: 英国心理学会(BPS)によるカウンセリング心理学の定義には、「死別、DV、性的虐待、トラウマといった人生の問題に関する広範なメンタルヘルス問題」に対処し、「診断とメンタルヘルス問題の医療的文脈を理解する」といった、病理に焦点を当てた側面が強調されています。これは、強みや目標達成に焦点を当てるアプローチとは対照的です。
* 見解: 近年のBPSの定義では、「心理的機能とウェルビーイングを向上させるために、個別に合わせた心理学的フォーミュレーションに取り組む」といった、強みやより包括的な側面に重きを置くようになっています。論文は「パラダイムシフトはすでに起きている」とし、それを正式なものにする必要があると述べています。
今後の展望と提案
論文は、カウンセリング心理学が進むべき道として、以下の具体的な提案をしています。
1. ガイドラインの策定: 学問および応用分野として、ポジティブ心理学とコーチング心理学に関連する知識とスキルの開発に焦点を当てた、具体的なガイドラインを策定するべきです。
2. 専門職としての適応: クライアントが変化する状況に適応するのを支援するように、カウンセリング心理学自体も新しいアイデアや方法論の登場、専門職を取り巻く環境の変化に適応し、変化していくべきです。
3. サービスの拡充と競争力の確保: これにより、カウンセリング心理学者はクライアントに対してより完全で包括的な心理学的サービスを提供でき、競争の激しい人材サービス市場での地位を向上させることができます。
4. 専門家との連携: 経験豊富なカウンセリング心理学者が、英国心理学会の「コーチング心理学特別グループのコーチング心理学者登録簿」に参加するなどして、この分野で活動する他の心理学専門家と積極的に関わることが有効な手段となり得ます。
このように、専門職全体としてこの重要な分野に貢献することで、クライアント、専門職、そして社会全体の利益に、より良く貢献することができると結論付けています。
投稿者プロフィール

- 監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
- 徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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