レジリエンスカウンセリングの実践法 資格取得の参考に
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レジリエンスカウンセリングの実践法入門
ポジティブ心理療法(PPT)の視点から
講座を頂く前に,知っておいていただけると,より効果的です。
ポジティブ心理療法は、病理や症状の軽減だけでなく、ウェルビーイング(幸福感)の向上と人間の潜在能力の開花を目指します。レジリエンスを「困難からの回復力」だけでなく、「逆境を通じた成長と繁栄」として捉えます。
ポジティブ心理療法の理論的基盤
PERMA理論(Seligman)
ウェルビーイングを構成する5つの要素:
- Positive Emotion(ポジティブ感情): 喜び、感謝、希望、愛
- Engagement(エンゲージメント): フロー状態、没頭
- Relationships(関係性): 温かく支持的な人間関係
- Meaning(意味): 人生の目的や意義
- Accomplishment(達成): 目標達成と有能感
レジリエンスの3つの柱
- ポジティブ感情: 困難時の心理的バッファーとなる
- 強みと美徳: 個人の核となる資源
- ポジティブな制度: 支援的な関係性とコミュニティ
ポジティブ心理療法のコアプロセス
第1段階: ポジティブな導入(Positive Introduction)
目的: 希望と可能性の感覚を育む
実践法:
1. ポジティブ・ライフレビュー
- 「あなたが最も輝いていた時期は?」
- 「これまでの人生で誇りに思う経験は?」
- 過去の成功体験と強みの発揮場面を探索
2. ベストポッシブルセルフ・エクササイズ
- 「1年後、最高の状態の自分を想像してください」
- 具体的に詳細に記述してもらう
- 希望と方向性を明確化
3. 感謝の導入
- カウンセリングの最初に感謝していることを3つ共有
- セッション自体をポジティブな体験として位置づける
第2段階: 性格的強みの発見と活用
VIA性格的強みの24分類
知恵と知識: 創造性、好奇心、向学心、柔軟性、大局観
勇気: 勇敢さ、忍耐力、誠実さ、熱意
人間性: 愛情、親切心、社会的知性
正義: チームワーク、公平性、リーダーシップ
節制: 寛容さ、慎み深さ、思慮深さ、自律心
超越性: 審美眼、感謝、希望、ユーモア、スピリチュアリティ
実践法:
1. 強み診断(VIAサーベイ)
- オンラインで無料実施可能
- 上位5つの「代表的強み」を特定
2. 強みスポッティング クライアントの語りから強みを見つけ、フィードバック:
- 「お話を聞いていて、あなたの〇〇という強みが伝わってきました」
- 気づいていない強みを言語化する
3. 強みの新しい使い方(Strength Spotting) 毎日、上位の強みを新しい方法で使う課題:
- 「好奇心」が強みなら、普段行かない場所を探索
- 「親切心」が強みなら、見知らぬ人に小さな親切を
4. 困難への強みの適用 現在の問題に対して強みをどう活用できるか:
- 「あなたの忍耐力をこの状況でどう活かせますか?」
- 強みベースの問題解決
第3段階: ポジティブ感情の育成
拡張・形成理論(Broaden-and-Build Theory)
ポジティブ感情は:
- 思考の幅を広げる(創造的思考)
- 行動のレパートリーを増やす
- 心理的・社会的・身体的資源を形成する
- レジリエンスを高める
実践法:
1. 三つの良いこと(Three Good Things) 毎晩、その日起きた良いことを3つ記録:
- 何が起きたか
- なぜそれが起きたか
- どう感じたか
継続することで楽観性が向上し、抑うつが軽減されます。
2. 感謝の実践
感謝の手紙と訪問:
- 感謝したい人への手紙を書く(300-400字)
- 可能なら直接訪問して読み上げる
- 最も効果的なポジティブ介入の一つ
感謝日記:
- 週に3回、感謝することを5つ書く
- 具体的で詳細に記述
3. サボアリング(味わうこと) ポジティブな体験を深く味わう技術:
瞬間のサボアリング:
- 五感を使って体験を味わう
- マインドフルに現在に留まる
- 美味しい食事、美しい景色を意識的に楽しむ
回想のサボアリング:
- 良い記憶を思い出し、再体験する
- 写真やメモで良い体験を保存
期待のサボアリング:
- 楽しみな予定を想像して味わう
4. ポジティブ感情の比率 ポジティブ感情とネガティブ感情の比率を3:1以上に:
- 感情ログをつける
- 意図的にポジティブ体験を増やす
第4段階: エンゲージメントとフロー
フロー体験の特徴(Csikszentmihalyi)
- 明確な目標がある
- 即座のフィードバック
- 挑戦とスキルのバランス
- 行為と意識の融合
- 時間感覚の変容
- 自意識の喪失
実践法:
1. フロー活動の特定
- 「時間を忘れて没頭することは?」
- 「やっている時に最も生き生きする活動は?」
- 趣味、仕事、対人交流など
2. フロー機会の増加
- 日常生活にフロー活動を組み込む
- スケジュールに「フロータイム」を設定
- 最低週3回、30分以上
3. スキル-チャレンジバランス
- 易しすぎると退屈、難しすぎると不安
- 適度な挑戦レベルの活動を設計
- 徐々に難易度を上げる
4. 仕事のクラフティング 仕事を自分の強みと興味に合わせて再設計:
- タスクのクラフティング: 業務内容の調整
- 関係性のクラフティング: 人間関係の調整
- 認知のクラフティング: 仕事の意味の再解釈
第5段階: ポジティブな関係性の構築
実践法:
1. 積極的・建設的反応(Active-Constructive Responding)
他者の良い知らせへの4つの反応スタイル:
| 積極的 | 消極的 | |
|---|---|---|
| 建設的 | 熱心に喜び、詳しく聞く | 控えめに喜ぶ |
| 破壊的 | 問題点を指摘 | 無視・話題変更 |
積極的・建設的反応を練習:
- 目を見て、笑顔で
- 興奮と喜びを表現
- 詳細を質問
- 価値を認める
2. 他者への親切行為
- 週に1日、5つの親切を実践
- 予期しない親切がより効果的
- 小さなことで十分(ドアを開ける、褒めるなど)
3. 関係性の強み
- 愛情、親切心、社会的知性の強みを活用
- 大切な人との質の高い時間
- 深い会話と感情的つながり
4. 許しのワーク 過去の傷への対処:
- 許しは相手のためでなく自分のため
- REACH法:
- Recall(思い出す)
- Empathize(共感する)
- Altruistic gift(利他的贈り物)
- Commit(約束する)
- Hold(保持する)
第6段階: 意味と目的の発見
実践法:
1. 人生の意味の探索
3つの意味の道(Seligman):
- 快楽の人生: 喜びと満足の追求
- 没頭の人生: 強みを活かしフローを体験
- 意義の人生: 自分より大きなものに貢献
意味の源泉:
- 仕事や創造的活動
- 愛と関係性
- 逆境への態度
- スピリチュアリティ
2. 価値の明確化
- 人生で最も大切なことは何か
- どんな人間でありたいか
- 死ぬ時に何を達成していたいか
3. レガシーワーク
- 「あなたは世界にどんな足跡を残したいですか?」
- 自分の物語の中での現在の位置づけ
- 将来世代への貢献
4. 意味志向の目標設定
- 価値に基づいた具体的目標
- 内発的動機づけ
- 他者や社会への貢献を含む
第7段階: 達成と成長マインドセット
実践法:
1. SMART目標の設定
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限)
2. 成長マインドセット(Dweck) 固定マインドセット vs 成長マインドセット:
能力は変えられないもの → 努力で成長できるもの 失敗は能力不足の証明 → 学びと成長の機会
育成方法:
- 「まだできない」という言葉の使用
- プロセスを褒める(結果ではなく)
- 失敗からの学びを重視
3. 小さな勝利の積み重ね
- 大きな目標を小ステップに分解
- 毎日の進歩を記録
- 達成を祝う習慣
4. グリット(やり抜く力) 情熱と粘り強さ:
- 長期目標への献身
- 困難への粘り強さ
- 興味の育成と深化
第8段階: 心的外傷後成長(PTG)
逆境からの成長の5領域
- 人間関係の深化: より深い絆と共感
- 新しい可能性: 新しい道や機会の発見
- 個人的強さ: 自己への信頼の増大
- スピリチュアルな変化: 実存的・霊的な深まり
- 人生への感謝: 日常への新たな感謝
実践法:
1. ナラティブ・ライティング 困難な体験について書く:
- 最初は感情を自由に表現
- 徐々に意味づけと成長の側面を探索
- 「この経験が私に教えてくれたことは?」
2. 利益発見 逆境の中の小さな良いことを見つける:
- 「この困難がなければ得られなかったものは?」
- 「この経験で強くなった部分は?」
3. 人生の物語の再構成 困難を人生の物語の中に統合:
- 被害者の物語 → 生存者の物語 → 繁栄者の物語
- 逆境を成長の転換点として位置づける
ポジティブ心理療法のセッション構造
標準的な12セッションプロトコル
セッション1-2: 導入とポジティブ感情
- オリエンテーション
- 良いことを思い出すエクササイズ
- 三つの良いこと日記の開始
セッション3-4: 強みの発見と活用
- VIA強み診断
- 強みスポッティング
- 強みを新しく使う課題
セッション5-6: サボアリングと感謝
- ポジティブ体験を味わう
- 感謝の手紙作成
- 感謝訪問の準備
セッション7-8: 関係性とコミュニケーション
- 積極的・建設的反応の練習
- 親切行為の実践
- 許しのワーク
セッション9-10: 意味と目的
- 価値の明確化
- 人生の意味の探索
- 意味志向の目標設定
セッション11-12: 統合と達成
- これまでの学びの統合
- 継続計画の作成
- 将来のビジョン
ホームワーク(幸福増進エクササイズ)
毎日の実践
- 三つの良いこと日記
- 上位強みを使う
- マインドフルな瞬間
週単位の実践
- 感謝の手紙を書く
- 親切行為5つ
- フロー活動3回以上
月単位の実践
- 感謝訪問
- ベストポッシブルセルフの見直し
- 人生の意味の再確認
カウンセラーの姿勢
ポジティブな焦点
問題だけでなく、うまくいっていることにも注目します。「何があなたを支えていますか?」
希望の促進
未来への希望と可能性を常に開いておきます。
強みベースの言語
クライアントの語りから強みを見つけ、言語化します。
本物の楽観主義
現実を直視しながらも、成長の可能性を信じます。
エビデンスと効果
ポジティブ心理療法は以下の効果が実証されています:
- うつ症状の軽減
- 不安の低減
- ウェルビーイングの向上
- レジリエンスの強化
- 再発率の低下
効果は短期的だけでなく、6ヶ月後、1年後も持続します。
まとめ
ポジティブ心理療法は、人間の「最悪を最良に」するだけでなく、「良いをさらに良く」することを目指します。レジリエンスは単に困難から回復する力ではなく、逆境を通じて成長し、人生をより豊かにする能力として育成されます。
希望、強み、意味、関係性、成長—これらを育むことで、持続可能で真のレジリエンスが花開きます。
具体的な技法や特定のクライアント層への適用について、さらに詳しく知りたいことはありますか?
投稿者プロフィール

- 監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
- 徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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