認知行動療法とポジティブ心理療法の違いと統合
認知行動療法(CBT)とポジティブ心理療法は、心の健康に対するアプローチの視点と焦点が大きく異なります。CBTが主に問題の改善を目指すのに対し、ポジティブ心理療法は強みの発揮と幸福の促進を目指します。ポジティブ心理療法では,両面を取り入れて,統合的に活用することで,問題解決と幸福感の向上の両面を目指します。
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認知行動療法とポジティブ心理療法の違いと比較 🔬
焦点と目的
| 側面 | 認知行動療法 (CBT) | ポジティブ心理療法 |
| 主な焦点 | ネガティブな思考、感情、行動パターン(問題、症状、障害) | ポジティブな要素、強み、美徳、幸福感、ウェルビーイング |
| 主な目的 | 問題の解決・症状の軽減、機能の回復、認知の歪みの修正 | 幸福感・満足度の向上、レジリエンス(精神的回復力)の強化、潜在能力の発揮 |
| 基本姿勢 | 問題解決志向、欠陥モデル(改善すべき問題があるという見方) | 成長・強み志向、健康モデル(既に持っているリソースを活かすという見方) |
| 主な対象 | うつ病、不安障害、パニック障害などの精神疾患の治療 | すべての人の精神的な健康と充実感の向上、予防的アプローチ |
具体的な技法
| 側面 | 認知行動療法 (CBT) | ポジティブ心理療法 |
| 技法例 | 認知再構成(思考の記録と検証)、行動活性化、暴露療法、問題解決スキル訓練 | 感謝の記録(感謝できることを書き出す)、強み発見と活用、サヴァリング(ポジティブな経験の味わい)、理想の自分を描く |
統合的アプローチ(ポジティブ認知行動療法など)🤝
近年では、CBTの構造化された問題解決アプローチと、ポジティブ心理学のウェルビーイング(幸福)を促進する視点を組み合わせた統合的アプローチが登場しています。代表的なものとして、ポジティブ認知行動療法 (P-CBT) や、ウェルビーイング療法 (WBT) などがあります。
統合の利点
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包括的なアプローチ: 従来のCBTが苦手としていた幸福感の増加や、ポジティブな感情の促進といった要素を補完できます。
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レジリエンスの強化: 問題解決能力に加え、クライエントの強みやリソースに焦点を当てることで、将来の困難に対処する**精神的回復力(レジリエンス)**を高められます。
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治療効果の向上: 特にうつ病の治療において、ポジティブな感情に焦点を当てることで、従来のCBTよりも効果的である可能性が示唆されています。
統合的な技法の例
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バランスの取れた自己モニタリング: ネガティブな思考だけでなく、成功体験や発揮できた強みも同時に記録し、自己の全体像を把握する。
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認知の再構成と意味づけ: ネガティブな思考を現実的な代替思考に置き換える(CBT)だけでなく、その経験から学べることや意味を見出す(ポジティブ心理学)。
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行動活性化と強みの活用: 活動スケジュールを作成し実行する(CBT)際に、自分の強みを活かせる活動を意図的に取り入れる(ポジティブ心理学)。
この統合アプローチは、「問題をただなくす」だけでなく、「より良い状態へと積極的に成長する」ことを目指す、より包括的な支援を可能にします。
より具体的に、それぞれの療法のプロセスと核となる技法、そして統合されたアプローチについて詳しくご説明します。
1. 認知行動療法(CBT)の具体的な進め方と技法
CBTは、クライエントの「認知(考え方)」と「行動」に働きかけ、問題となっている症状や感情を改善することを目指します。
核となる考え方
自動思考: 状況に応じて瞬間的に頭に浮かぶ、無意識的な考え(例:「どうせうまくいかない」「自分はダメだ」)。これがネガティブな感情や不適応な行動を引き起こすと捉えます。
具体的な進め方(技法例)
① 認知再構成法(思考の検証)
ネガティブな自動思考を特定し、その妥当性を検証し、より現実的でバランスの取れた考え方に修正する技法です。
| ステップ | 実施内容 | 具体例 |
| 1. 状況の記録 | 強い感情を抱いた状況と、その時の感情を記録する。 | 上司に資料を提出した(状況)、不安・落ち込み(感情) |
| 2. 自動思考の特定 | その時、頭に浮かんだ自動思考を書き出す。 | 「上司はきっと私の仕事を評価しないだろう。」 |
| 3. 証拠の検証 | その思考を裏付ける証拠と、反証する証拠を客観的に検討する。 | 裏付け:過去に一度ミスした。 反証:先月は褒められた。今回は時間内に提出できた。 |
| 4. 適応的な思考の作成 | 証拠に基づき、より現実的でバランスの取れた思考に修正する。 | 「ミスもあるかもしれないが、大部分はしっかりやった。まずは結果を待とう。」 |
② 行動活性化
特にうつ症状などで活動量が低下している場合、行動を意図的に増やし、活動を通してポジティブな経験や達成感を得ることで、ネガティブな感情のループを断ち切ることを目指します。
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活動の計画と実行: 価値観に基づいた活動(例:散歩、友人に連絡)をスケジュールに組み込み、気分に関わらず実行します。
2. ポジティブ心理療法の具体的な進め方と技法
ポジティブ心理学を基盤とした療法は、問題の欠如ではなく人生の質と幸福の増進に焦点を当てます。
核となる考え方
ウェルビーイング(幸福)モデル (PERMAモデルなど): 真の幸福は、ポジティブ感情だけでなく、達成、人間関係、意味合い、没頭といった複数の要素から構成されると捉えます。
具体的な進め方(技法例)
① 強みの発見と活用
クライエントが持つ生まれ持った強みや美徳(例:ユーモア、粘り強さ、優しさ)を特定し、日常生活や仕事で意識的に使用する機会を増やします。
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技法例: 過去の成功体験を振り返り、その時に発揮した強みをリストアップする。その強みを**「明日」どう使うか**を計画し実行する。
② 感謝の表現
ポジティブな感情を増幅させるために、人生の良い側面に目を向ける習慣を養います。
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技法例(Three Good Things): 毎日寝る前に、その日に起こった「良かったこと」を3つ書き出し、それがなぜ起こったのかを簡単に記述します。
③ サヴァリング(Savoring)
ポジティブな経験を単に記録するだけでなく、その瞬間を五感を使って深く味わい、その喜びを増幅・持続させるための技法です。
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技法例: 美味しい食事をしている時、意識的に味、匂い、食感、見た目に注意を払い、その喜びを心の中で反芻します。
3. 統合的アプローチ(P-CBT、WBTなど)の具体例
CBTの「問題対処」能力と、ポジティブ心理学の「幸福促進」能力を組み合わせたのが、ポジティブ認知行動療法 (P-CBT) やウェルビーイング療法 (WBT) です。
統合のコンセプト:シフト(焦点を変える)
統合的なアプローチでは、クライエントの視点を以下の2つの軸で動かします。
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問題の視点(CBT) から リソースの視点(PP) へ。
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過去・現在の問題 から 未来の希望 へ。
統合的な技法の具体例
| 統合アプローチの側面 | 従来のCBT要素 | ポジティブ心理学要素 | 統合された実践 |
| 自己観察 | 自己モニタリング: 思考、感情、行動の記録。 | 強み発見: 日々の成功や発揮できた強みの記録。 | バランスの取れた自己記録: ネガティブな自動思考と同時に、「今日の良かったこと」や「発揮できた強み」を同じシートに記録し、全体像を把握する。 |
| 認知変容 | 認知再構成: ネガティブな思考の妥当性検証と修正。 | リフレーミング: 出来事の意味付けをポジティブに変える。 | 意味づけの強化: 修正された現実的な思考をさらに一歩進め、「この経験から何を学べるか」「これを将来にどう活かせるか」といった成長の意味を加える。 |
| 行動 | 行動活性化: スケジュールに基づく活動の増加。 | 強みの活用: 自分の核となる強みを意識的に使う。 | 価値観に基づく行動活性化: 単に活動を増やすだけでなく、自分の最も大切な価値観(例:優しさ、創造性)を反映した活動(強み)を意図的に実行し、活動の意味合いと喜びを高める。 |
このように、統合的アプローチは、CBTの持つ構造的なフレームワークと問題への対処技術の中に、ポジティブ心理学の未来志向で成長を促す視点を組み込むことで、単なる症状の回復に留まらない、**人生の質の向上(ウェルビーイング)**を目指します。
そして,ポジティブ心理療法,ポジティブ認知行動療法では,両面を取り入れて,統合的に活用することで,問題解決と幸福感の向上の両面を目指します。
投稿者プロフィール

- 監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
- 徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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