桜梅桃李と「自分らしい幸せ」の育て方

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桜梅桃李と「自分らしい幸せ」の育て方

── ポジティブ心理学が教えてくれた、比べなくていい理由 ──

この記事でわかること:「桜梅桃李」という言葉に込められた幸せの哲学 / なぜ「自分らしい幸せ」を育てることが大切なのか / ポジティブ心理学の「PERMA理論」で見えてくる幸せの本質 / 他者と比べずに幸せを感じるための、今日からできる実践ステップ

「あの人みたいに幸せになれたら」と思ったこと、ありませんか?

SNSのタイムラインには、今日も誰かの「幸せそうな日常」が流れてきます。きれいな食事、素敵なパートナー、充実した仕事、遠くへの旅行……

「いいね」を押しながら、胸の奥にちくっとした痛みを感じたことは、ありませんか?

「私の幸せって、なんだろう」と、ふと手が止まることは?

これは、あなたが不幸なのではなく、「他者の幸せ」と「自分の幸せ」を混同してしまっているサインかもしれません。

そして実は、そのもつれをほぐすヒントが、日本に古くから伝わる美しい言葉の中にあります。それが「桜梅桃李(おうばいとうり)」です。

「桜梅桃李」── 4つの花が語る、幸せの多様性

読み方と由来

「桜梅桃李」は「おうばいとうり」と読みます。桜・梅・桃・李(すもも)、4つの花木を並べた言葉で、中国の古い詩語に由来します。日本では仏教思想の中で「それぞれの花が、それぞれの時期に、それぞれの美しさで咲く」という個性の尊重を表す言葉として深く根づいてきました。

この言葉が伝えたいこと

桜は2月に花をつけない。梅は秋に紅葉しない。桃はすももになれない。それでも、どの花も美しく、どの花も必要とされている。

これは植物の話ではなく、私たち人間の話です。

あなたの幸せの「形」と「タイミング」は、誰かと同じである必要はない。桜のような華やかな幸せでなくても、梅のような静かな幸せでも、桃のような甘い幸せでも、すももの酸味のある深い幸せでも、どれも本物です。

なぜ今、この言葉が必要なのか

情報が溢れる時代において、私たちは「幸せのモデル」を外側から大量に浴びせられています。成功した人、充実した暮らし、理想的な関係……。そのたびに「自分の幸せはこれでいいのか」という不安が生まれやすくなっています。

桜梅桃李の教えは、そんな現代だからこそ、深く刺さる言葉なのです。

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ポジティブ心理学が明かす「幸せとは何か」

幸せは「一つの形」ではない

ポジティブ心理学の創始者、マーティン・セリグマン博士は、幸福を「PERMA理論」で説明しています。これは「幸せの形は人によって違う」という考えを科学的に体系化したものです。

PERMA理論 ── 幸せを構成する5つの要素

  • PPositive Emotions):喜び、感謝、穏やかさなどのポジティブな感情
  • EEngagement):何かに夢中になり、没頭できる体験
  • RRelationships):深くつながれる人間関係
  • MMeaning):人生の意味・目的・使命感
  • AAccomplishment):達成感・成し遂げる喜び

注目してほしいのは、この5つすべてを同じ比重で持つ必要はないということです。ある人はRの「つながり」に深く幸せを感じ、別の人はMの「意味」に生きがいを見出す。どの要素が大きくても、それがあなたの幸せの「形」です。

「正しい幸せ」なんて存在しない。あなたのPERMAの配合が、あなただけの幸せのレシピ。

「ヘドニア」と「エウダイモニア」── 幸せには2種類ある

古代ギリシャの哲学、そして現代のポジティブ心理学は、幸せを大きく2つに分類しています。

一つは「ヘドニア(快楽的幸福)」。楽しいことをして気持ちよくなる、その瞬間の喜びです。おいしいものを食べる、旅行に行く、好きな人と過ごす……これも大切な幸せです。

もう一つは「エウダイモニア(意味的幸福)」。自分らしく生き、成長し、誰かの役に立っているという深い充足感。瞬間的な喜びではなく、じわじわと積み上がっていく幸せです。

どちらが優れているということはありません。ただ、多くの研究が示しているのは、長期的な幸福感と生活満足度には「エウダイモニア」がより強く関係しているということです。

そして「自分らしい幸せを育てる」とは、まさにこのエウダイモニアを大切にすることと重なっています。

なぜ「比べる」と幸せを見失うのか

比較は脳の自動機能

他者と自分を比べることは、人間の脳に備わった自然な働きです。心理学者レオン・フェスティンガーが1954年に提唱した「社会的比較理論」によると、私たちは自分の状況を評価するとき、無意識に他者を基準にします。これは生存本能の一部であり、「比べてしまう自分」は決しておかしくありません。

SNS時代の「上方比較」の罠

問題は、SNSが「最も輝いている瞬間」だけを切り取って発信するプラットフォームであるということです。私たちは知らず知らずのうちに、他者の「ハイライト」と自分の「日常」を比べ続けています。

Aさんの旅行写真」と「自分の月曜の朝」を比べているのと同じ。それは公平な比較ではない。

この不公平な比較を繰り返すと、脳は「自分の幸せは足りない」という誤った認識を強化していきます。幸せは増えていないのに、「幸せ感」はどんどん薄れていく。これが「幸せの比較トラップ」です。

「桜梅桃李」の目線で比較を外す

桜梅桃李の考え方は、この比較トラップから抜け出す「目線の変換」を促してくれます。梅は桜の開花時期を羨まない。桃は梅の清楚な香りを妬まない。それぞれが「自分の咲き時」「自分の咲き方」を信じているからです。

あなたの幸せの咲き時は、あなただけのものです。他の誰かの咲き時と同じである必要はありません。

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「自分らしい幸せ」を育てる ── 今日からできる5つのステップ

自分らしい幸せは、突然やってくるものではなく、少しずつ丁寧に育てていくものです。庭の花を水やりするように、毎日の小さな習慣が大切です。

ステップ1:「私の幸せリスト」をつくる

まず紙とペンを用意してください。「自分がほっとする瞬間」「なんとなく気持ちよかった瞬間」を10個書き出してみましょう。旅行でも昇進でもなくていい。「静かな朝にコーヒーを飲む時間」「猫に触れると落ち着く」「古い映画を観ながら毛布にくるまる」……そういう、ささやかな幸せで十分です。

このリストがあなたの「幸せの地図」になります。他の誰かのリストと比べなくていい。これはあなただけのものです。

ステップ2:「幸せの種」を毎日3つ記録する

ポジティブ心理学の実証研究の中で、最も広く知られる「スリー・グッド・シングス(3つの良かったこと)」というワークがあります。毎日寝る前に、「今日、少しでも良かったこと・嬉しかったこと」を3つ書き出すだけです。

重要なのは「誰かと比べてどうか」ではなく、「自分の一日の中に、幸せの種があったか」を探すことです。この習慣を続けると、脳が「幸せを見つける回路」を強化していきます。2週間続けると変化を感じ始める方が多いです。

ステップ3:「エウダイモニアの問い」を持つ

週に一度、次の問いを自分に投げかけてみてください。

「今週、自分らしいと感じた瞬間はあったか?」「誰かの役に立てたと感じた瞬間はあったか?」「何かに夢中になれた時間はあったか?」

これらの問いへの答えが、あなたの「エウダイモニア=自分らしい幸せ」の手がかりになります。答えが見つからない週があっても大丈夫。問いを持ち続けることが大切です。

ステップ4:幸せを「比べる軸」から「育てる軸」へ

「あの人と比べて自分は幸せか」という問いを、「先週の自分より、今週は少し幸せに過ごせたか」に変えてみてください。比較の基準を他者から自分の過去に変えるだけで、幸せの感じ方が大きく変わります。

ポジティブ心理学では、これを「自己成長志向(Growth Orientation)」と呼びます。幸せを「持つもの」ではなく「育てるもの」と捉える視点です。

ステップ5:「今、ここ」の幸せに気づく練習

マインドフルネスの実践は、過去の後悔や未来の不安から意識を引き戻し、「今この瞬間にある幸せ」に気づく力を育てます。15分、次のことを試してみてください。

目を閉じて、今感じている感覚に意識を向けます。体の重さ、空気の温度、呼吸のリズム。「今ここに、私はいる」とただ感じる時間。比較も評価もしない、ただ「在る」時間です。

この習慣が、桜梅桃李の精神、つまり「今の自分が今の自分の花を咲かせている」という実感につながっていきます。

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よくある悩みと、ポジティブ心理学からのヒント

「自分らしい幸せが何なのか、わからない」

これはとても多い悩みです。「自分らしい幸せ」は、探すものではなく、気づくものです。まずは「これをしているとき、なぜかほっとする」「これがあると、なんとなく嬉しい」という小さな感覚を集めることから始めてください。大きな答えは、その積み重ねの先に見えてきます。

「周りが幸せそうに見えて、自分だけ取り残された気がする」

その感覚はとても自然なものです。でも思い出してください。桜が「梅が先に咲いて羨ましい」と思っても、桜の花期は変わらない。あなたの花が咲く時期は、あなただけのものです。取り残されているのではなく、準備をしている途中かもしれません。

「幸せになりたいのに、何もやる気が出ない」

それは「幸せに向かうエネルギー」が今は少ない状態のサインです。小さなことから始めてください。今日の「良かったこと」を一つ見つけるだけでいい。幸せは大きく掴むものではなく、小さく拾い集めるものです。もし長期間、気力が湧かない状態が続くなら、専門家への相談も一つの選択肢です。

まとめ:あなたの幸せは、あなたの庭に咲く

桜梅桃李という言葉が、今の時代の私たちに伝えてくれることは一つです。

幸せは「正解」ではなく「あなただけの物語」。比べるものでも、追いつくものでも、証明するものでもない。ただ、あなたの土壌に、あなたのペースで、あなたの花を育てることが、本当の幸せへの道。

ポジティブ心理学もまた、同じことを科学の言葉で語っています。幸せはあなたの外にあるものをたくさん手に入れることではなく、あなたの内側に宿っているものに気づき、丁寧に育てていくことです。

あなたの幸せの形は、誰かと違っていていい。タイミングが違っていていい。地味でも、ゆっくりでも、それがあなたの花なら美しい。

今日から、誰かの庭を羨む時間の代わりに、自分の庭の土を耕してみてください。きっと、確かな幸せが芽吹いていきます。

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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