なぜ対策を講じても休職・離職が減らないのか? ポジティブ心理カウンセラーの重要性
なぜ対策を講じても休職・離職が減らないのか
——5つの落とし穴と、職場を守る5つのアクション——
休職・離職対策 / メンタルヘルス / 職場環境改善 / 人材定着
はじめに――「やっているのに減らない」の本当の理由
「研修を実施した」「相談窓口を設けた」「ストレスチェックも毎年やっている」――それでも休職者が出る、離職者が止まらない。そんな悩みを抱える人事担当者や管理職の方は、決して少なくありません。
実は、多くの職場で講じられている対策は「やった感」にとどまっており、問題の根本には届いていないケースがほとんどです。本記事では、よくある5つの落とし穴を明確にしたうえで、本当に効果のある5つのアクションを具体的にご紹介します。
もし今、あなたの職場で同じ悩みを抱えているなら、ぜひ最後まで読んでみてください。きっと「そういうことか」という気づきがあるはずです。
離職を減らすために知っておきたい ポジティブ心理学・ポジティブ心理療法の活用法 ~人が辞めない職場をつくる科学的アプローチ~
PART 1|対策を講じても休職・離職が減らない「5つの落とし穴」
落とし穴① 「対策」が点であり、線になっていない
ストレスチェックを実施して終わり。研修を1回やって終わり。多くの組織で行われる対策は「イベント」として存在しており、日常のマネジメントや職場文化と連動していません。
休職・離職は、ある日突然起こるわけではありません。長期にわたるストレスの蓄積、小さなサインの見逃し、相談できない環境の積み重ねが原因です。つまり、対策も「継続的なプロセス」でなければ意味がないのです。
- ストレスチェックの結果をその後の面談や業務改善に活かしていない
- 研修の内容が現場の実情と乖離しており、受講後に行動が変わらない
- 個別対応で終わり、組織全体の仕組みにつながっていない
対策は「単発のイベント」ではなく、日常業務に組み込まれた「継続的な仕組み」にする必要があります。
落とし穴② 「サイン」を見逃す管理職の問題を放置している
「うちの部下は元気そうだから大丈夫」という管理職ほど、危ない。これは現場でよく起こる現実です。メンタルヘルスの問題を抱える従業員の多くは、不調のサインを意図的に隠そうとする傾向があります。
管理職が日常的なコミュニケーションの中で早期サインを察知できる力(ラインケア能力)を持っていなければ、どれだけ相談窓口を充実させても機能しません。問題は「窓口がない」ことではなく、「窓口に来るまでに手が打てていない」ことなのです。
- 遅刻・欠勤の増加、ミスの多発などの行動変容に気づかない
- 「元気?」「大丈夫?」だけで終わる表面的な1on1 相談対応
- 管理職自身がストレスを抱えており、部下へのケアに余裕がない
落とし穴③ 「相談できない文化」そのものを変えていない
EAP(従業員支援プログラム)や社内カウンセラーを設けても、利用率が極端に低いという声をよく聞きます。なぜでしょうか。答えは明快です――「相談したら弱く見られる」「上司に知られるかもしれない」「使ったらキャリアに影響する」という恐怖感が拭えていないからです。
制度があっても、それを使いやすい心理的安全性がなければ、絵に描いた餅に過ぎません。ハード(制度)だけでなく、ソフト(文化・雰囲気)を変えることが不可欠です。
ポジティブ心理カウンセラーなど,前向きな支援を行うカウンセラーなど重要になります。
- 経営層・管理職が「弱さを見せない文化」を体現してしまっている
- 相談窓口の存在を全員が知らない、または利用方法がわからない
- プライバシーの保護についての説明が不十分で信頼感がない
落とし穴④ 「仕事の量・質」という根本原因に手をつけていない
メンタルヘルス対策として瞑想アプリを導入したり、リラクゼーションルームを作る企業も増えています。それ自体は悪くありませんが、長時間労働・過剰なノルマ・曖昧な役割分担といった「ストレスの源泉」を放置したままでは、根本的な解決にはなりません。
疲弊した従業員に「回復手段」だけを与えても、消耗スピードが回復スピードを上回れば、いつかは限界を迎えます。働く環境そのものを変えなければ、休職・離職のリスクはなくなりません。
- 残業時間の削減は指示しているが、業務量は変わっていない
- 評価制度が成果主義に偏り、プレッシャーが慢性化している
- ハラスメントの温床になる管理スタイルが是正されていない
落とし穴⑤ 「復職・定着」のフォローが弱い
休職から復職した従業員が、わずか数ヶ月で再休職・退職してしまうケースは珍しくありません。復職支援プログラムが形骸化していたり、職場に戻った後の「フォロー体制」が整っていないためです。
「休んでいいよ」と送り出すことができても、「戻ってきた後」の体制が整っていなければ、従業員は再び同じ状況に追い込まれます。入口(予防)と出口(復職)の両方を整備することが、真の意味での対策です。
- 復職後の業務量・役割調整が個人任せになっている
- 復職後に定期的なフォローアップ面談が設定されていない
- 周囲の従業員への配慮と情報共有(プライバシーの範囲内で)ができていない
ポジティブ心理カウンセラーの「前向きな支援者」が離職者対策として重要な理由
1.離職は「能力不足」より、心理的要因が大きいため
離職の背景には、
- ストレス
- 燃え尽き(バーンアウト)
- 孤立感
- 意味喪失
- 自己効力感低下
- 人間関係疲労
などの心理的課題が関わることが少なくありません。
前向きな支援を行うカウンセラーは、これらを早期に支援できます。
2.「問題対応」だけでなく「強み・資源」を活かせるため
従来型支援:
問題・不調・欠点への対応
ポジティブ心理学的支援:
強み・希望・レジリエンス・意味・成長への支援
離職予防では、単に不調を減らすだけでなく、
「働き続けられる心理的資源」を育てること
が重要になります。
3.心理的資本(PsyCap)を高めやすいため
前向きな支援は、離職予防に関連する心理的資本を高めます。
- Hope(希望):未来の道筋を描く
- Efficacy(自己効力感):「できる感覚」を育てる
- Resilience(回復力):困難から立ち直る
- Optimism(楽観性):前向きな見通し
これらは、定着率・エンゲージメント・ウェルビーイングと関連します。
4.「意味」と「働く意欲」を回復しやすいため
離職前には、
「なぜ働くのかわからない」
「自分の価値を感じない」
という状態が起こりやすくなります。
前向きなカウンセリングでは、
- 強み
- 価値観
- やりがい
- 使命感
- キャリアの意味
を再発見しやすくなります。
5.予防型支援ができるため
離職対策では、
「辞める直前」では遅い場合があります。
ポジティブ心理カウンセラー等は、
- 小さな疲労サイン
- モチベーション低下
- 心理的消耗
- 共感疲労
などの段階で支援し、予防的介入ができます。
シンプルまとめ
| 理由 | 離職対策への効果 |
|---|---|
| ストレス・燃え尽き対応 | 離職リスク低減 |
| 強み・資源活用 | 働く力向上 |
| 心理的資本向上 | 定着・回復促進 |
| 意味・価値観支援 | モチベーション回復 |
| 予防的支援 | 早期対応 |
一言でいうと
ポジティブ心理カウンセラーなど前向きな支援者は、
「問題を減らす」だけでなく、「働き続ける心理的資源・希望・回復力・意味」を育てるため、離職者対策に重要です。
PART 2|休職・離職を防ぐ体制を築くための「5つのアクション」
アクション① ストレスチェックを「見える化と改善」につなげる
まず取り組むべきは、ストレスチェックの「使い方改革」です。法律で義務化されているストレスチェックを、義務だからやる消化作業にしてはいけません。結果を組織全体で共有し、集団分析をもとに部署ごとの課題を特定・改善する流れを作ることが重要です。
- ストレスチェック実施後、高ストレス者に対して産業医・保健師による面談を確実に実施する
- 集団分析の結果を部署ごとにフィードバックし、管理職が改善策を検討・実行する
- 翌年のチェックで改善効果を測定し、PDCAサイクルを回す
ポイント:ストレスチェックは「個人の問題発見」ではなく「組織の課題発見」のツールとして活用しましょう。
アクション② 管理職の「ラインケア力」を体系的に育てる
管理職が部下の変化に気づき、適切に声をかけ、必要であれば専門家につなぐ能力(ラインケア)を組織全体で育てることが急務です。年1回の研修ではなく、実践的なロールプレイや、日常業務の中での振り返りを組み合わせることで、行動変容につなげます。
- 部下の不調のサイン(遅刻増加、発言減少、パフォーマンス低下など)を具体的に学ぶ研修を定期実施
- 1on1の質を高めるための「傾聴スキル」「オープンクエスチョン活用」のトレーニングを実施
- 管理職自身のセルフケアも支援し、余裕を持てる環境をつくる
アクション③ 「心理的安全性」を高め、相談できる文化をつくる
心理的安全性とは、「失敗しても責められない」「弱みを見せても大丈夫」という安心感のことです。Googleの研究でも、チームのパフォーマンスに最も影響する要因として心理的安全性が挙げられています。
この文化は、経営者・管理職が率先して「自分も悩んだ経験がある」「失敗から学んだ」という姿を見せることで醸成されます。トップのメッセージと行動が、職場全体の空気を変えていきます。
- 経営層・管理職が自身のメンタルヘルス体験を積極的に開示し、相談のハードルを下げる
- 相談窓口の利用方法・守秘義務・プライバシー保護について、入社時と年1回以上周知する
- チームミーティングでポジティブフィードバックを習慣化し、発言しやすい空気をつくる
アクション④ 「業務量・働き方」そのものをデザインし直す
休職・離職を根本から減らすには、人的対応だけでなく、業務そのものを見直すことが不可欠です。担当者の役割・権限・目標が明確か?業務量は個人の能力に見合っているか?ハラスメントのリスクを生む管理スタイルが残っていないか?この3点を定期的に棚卸しすることが重要です。
- 役割・権限・目標のJD(ジョブディスクリプション)を整備し、過剰な曖昧さをなくす
- 月次で残業時間・有休取得率・時間外申請状況をモニタリングし、異常値のある部署に介入する
- 360度フィードバックや匿名サーベイでハラスメントリスクを定期的に可視化し、管理職の行動改善につなげる
ポイント:テレワーク・フレックス等の柔軟な働き方制度も、ストレス軽減と優秀人材の定着に有効です。制度の設計と運用ルールをセットで整備しましょう。
アクション⑤ 「復職支援プログラム」を体系化し、再発を防ぐ
休職者が安心して戻れる職場を作ることは、本人の回復を助けるだけでなく、周囲の従業員にとっても「この会社は人を大切にする」というメッセージになります。復職支援は会社の信頼づくりでもあるのです。
- 復職前に上司・人事・産業医の三者で復職支援プランを作成し、業務量・役割の段階的な調整ルールを明文化する
- 復職後3ヶ月・6ヶ月のフォローアップ面談を必須化し、小さな不安をキャッチする
- チームメンバーへの必要最低限の情報共有(詳細は伏せつつ)と、受け入れ態勢の整備を行う
- 再発リスクが高まるサインを事前に共有し、早期介入できる仕組みをつくる
まとめ――「やっている」から「機能している」へ
休職・離職を防ぐ取り組みは、「何かをやっている」状態から「仕組みとして機能している」状態へと進化させることが本質です。本記事でご紹介した5つの落とし穴と5つのアクションを、もう一度整理しましょう。
【5つの落とし穴】
- 対策が「点」であり、継続的な仕組みになっていない
- 管理職のラインケア能力が不十分で、サインを見逃している
- 相談できない文化・心理的安全性の低さが放置されている
- 業務量・働き方という根本原因に手をつけていない
- 復職・定着のフォロー体制が弱く、再発・再離職を招いている
【5つのアクション】
- ストレスチェックを「見える化と改善」につなげる
- 管理職の「ラインケア力」を体系的に育てる
- 「心理的安全性」を高め、相談できる文化をつくる
- 「業務量・働き方」そのものをデザインし直す
- 「復職支援プログラム」を体系化し、再発を防ぐ
「対策をやっているのになぜ減らないのか」――その答えは、多くの場合、対策の「中身」ではなく「つながり方」と「深さ」にあります。個別の施策を点として打つのではなく、予防・早期発見・支援・復職というサイクル全体を、組織の仕組みとして構築していくこと。それが、人が安心して長く働ける職場を実現する唯一の道です。
今日から一つ、できることから始めてみてください。小さな一歩が、職場全体の大きな変化につながります。
よくある疑問――Q&A形式でお答えします
Q.一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では,「離職対策」「レジリエンス」に関する方法を学べますか?
はい、当協会では,一般的な心理学,ポジティブ心理学などの視点から,レジリエンスについて扱っています。科学的なエビデンスと物語のナラティブを活用して,より現代的な視点でのレジリエンスを学ぶ事可能です。おもに,レジリエンスカウンセラー講座などで開催しております。
https://positive-counselor.org/event/resilience/
Q.一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では,「離職対策」「レジリエンス」に関する実践を団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)
はい,実施しております。多数の研修事例があります。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
協働で研修なども可能です。
https://positive-counselor.org/contact/
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休職対策 / 離職防止 / メンタルヘルス / ストレスチェック / ラインケア / 心理的安全性 / 復職支援 / 人材定着 / 職場環境改善 / ウェルビーイング / 産業保健 / 管理職研修 / 1on1面談 / EAP / ハラスメント対策
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投稿者プロフィール

- 監修者:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事
- 徳吉陽河(とくよしようが)は、ポジティブ心理学、ポジティブ心理カウンセラー協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。ポジティブ心理療法士、コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師、教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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