医療・看護・医療従事者に,『これからの生き方(Tomorrowmind日本語版)』をおすすめする理由とメリット

医療・看護 × Tomorrowmind(PRISM)

医療・看護職にすすめたい
『これからの生き方』と5つの心の力

医療・看護の現場は、今この瞬間も誰かの命や生活に向き合い続けています。感染症、制度の変化、医療AIの進歩――不確実な時代の中で、あなた自身のウェルビーイングは守れていますか?このページでは、『これからの生き方』(Tomorrowmind日本語版)が医療・看護職にとって特別な意味を持つ理由をご紹介します。

「知っている」から「できる」へ。合言葉は「心に聴く、心に響く、心に効く」。

監修:一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 | 最終更新日:2026年10月7日

ひとことで言うと

  • 『これからの生き方』は、マーティン・セリグマンとガブリエラ・ローゼン・ケラーマンの共著『Tomorrowmind』の日本語版で、「患者さんのために頑張る自分自身」を科学的に支える一冊です。
  • 本書は、変化の中で繁栄するための5つの心の力「PRISM」(未来予想力・レジリエンス・創造性・つながり・重要感)を提唱しています。
  • 医療現場はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)が凝縮した環境で、PRISMはバーンアウト(燃え尽き)の予防に役立つ視点を与えてくれます。
  • レジリエンスは「傷つかない強さ」ではなく、苦しみを受け止めながら前に進む回復力です。ピアサポートや心理的安全性のあるチームが支えになります。
  • 看護師長・主任・教育担当者など、後輩や部下のウェルビーイングを支える立場の方にも実践的なヒントがあります。
  • 当協会の認定資格は民間資格ですが、国際学会の新しい研究や時代のニーズを先取りして講座にし、独自に研究・実践を重ねています。公認心理師・看護師・キャリアコンサルタントなどの国家資格と組み合わせると、相乗効果(シナジー)が生まれます。

なぜ今、医療・看護職に『これからの生き方』?

毎日、患者さんや家族と向き合い、チームのために動き、学び続ける。医療・看護の仕事は、高い使命感と専門性が求められる職業です。その一方で、人手不足、夜勤・長時間労働、命に関わる緊張感が積み重なり、バーンアウト(燃え尽き症候群)が大きな課題になっています。

本当に問いたいのは、こういうことではないでしょうか。
「患者さんを支え続けるために、まず私自身が心の力を育てるには、どうすればいいのか?」

本書の著者は、現代の職業人が直面する大きな課題としてVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)を挙げています。医療現場はまさに、このVUCAが凝縮した環境です。

  • 新興感染症や未知のウイルスへの対応
  • 医療AIの導入・デジタルトランスフォーメーション
  • 診療ガイドラインや制度の急速な変化
  • チーム医療・多職種連携の複雑化
  • 患者さん・家族の価値観の多様化
医療・看護職と『これからの生き方』(Tomorrowmind日本語版)をテーマにしたイメージ
医療・看護の現場に『これからの生き方』を

PRISMとは?医療・看護職が育てたい5つの心の力

本書の核心は、変化の中でも繁栄するための5つの心理的スキルを「PRISM」として整理した点にあります。

PRISMの要素 医療・看護職にとっての意義 現場での例
未来予想力(Prospection) リスク予測・キャリア設計・倫理的判断 「今夜この状態が続いたら何が起きるか」と先読みして早めに動く。5年後のキャリアを描く。
レジリエンス(Resilience) バーンアウト予防・逆境からの回復 看取りや急変のあと、つらさを受け止めつつ、仲間と振り返って前に進む。
創造性(Innovation) 臨床判断の柔軟性・新しい課題解決 患者さんの語り(ナラティブ)を活かしたケアや、新しいミーティングの工夫を取り入れる。
つながり(Social Connection) 患者さん・チーム・組織との信頼関係 患者さんとの関係づくりと、同僚同士の支え合いの両方を大切にする。
重要感(Mattering) 使命感の再確認・職業的アイデンティティ 「自分がいることで、誰かが助かっている」という実感を言葉にして確かめる。

レジリエンスは「折れない心」ではなく「何度でも立ち直る力」。ストレスに鈍感になることではありません。感じた苦しみや悲しみをきちんと受け止めながら、それでも前に進む回復力のことです。「強い人は傷つかない」「一人で乗り越えるべき」という思い込みから離れ、仲間の支えを借りることが大切です。

PRISMの5つの心の力PRISM未来予想力レジリエンス創造性つながり重要感
図:医療・看護職が育てたい5つの心の力(PRISM)

医療・看護職が本書を読むべき5つの理由とは?

  1. バーンアウトの予防に役立つ:症状への対処だけでなく、脳科学とポジティブ心理学の知見にもとづいて「燃え尽きにくい心の土台」を育てる視点が学べます。
  2. 患者ケアの質を支える:消耗しきった状態より、自分の心の力が満ちた状態で向き合うほうが、患者さんにも医療者にもよい関わりになります。
  3. キャリアを長く続けやすくなる:未来予想力と重要感を育てることで、自分のキャリアを主体的に描き、意欲的に働き続ける土台ができます。
  4. 後輩・部下の支援に活かせる:「どんな言葉をかければ相手の回復力が育つか」「心理的安全性を高めるミーティングの工夫は」といった問いに、実践的なヒントが得られます。
  5. 変化を「脅威」ではなく「機会」として捉え直せる:医療AI、遠隔診療などの変化を、新しい価値を生む機会として迎える考え方が身につきます。

あなたが健やかであることが、患者さんへの最良のケアにつながります。本書は、自己犠牲を美徳とするのではなく、科学的な根拠にもとづいた「心の力の育て方」を提示します。

具体例:病棟や看護チームでPRISMをどう活かす?

PRISMは、日々の臨床やチームの対話の中で少しずつ活かせます。

病棟(看取りのあと)

場面
担当していた患者さんが亡くなり、看護師が「もっと何かできたのでは」と自分を責めている。
関わり方
勤務後に短い振り返りの時間をとり、先輩がまず気持ちを最後まで聴く。そのうえで「あなたのケアで、患者さんやご家族が助けられた場面」を具体的に伝える。
期待される変化
つらさを一人で抱え込まずにすみ、自分の仕事の意味(重要感)を再確認できる。翌日も落ち着いて患者さんに向き合える。
看護管理

場面
看護師長が、病棟の疲れた雰囲気と離職の気配に悩んでいる。
関わり方
朝の申し送りに1分のチェックインを入れ、「困っていることを言っても大丈夫」と繰り返し伝える。業務改善のアイデアをスタッフから募り、小さく試す。
期待される変化
相談しやすい雰囲気(心理的安全性)が生まれ、スタッフ発の工夫が採用されることで、チームのつながりと意欲が高まる。
新人教育

場面
新人看護師が、インシデントのあと「自分は向いていない」と自信をなくしている。
関わり方
教育担当者が、事実の振り返りと気持ちの整理を分けて行い、「次に同じ場面が来たらどう動く?」と未来に向けた問いかけをする。
期待される変化
失敗が「次への準備」に変わり、新人が自分の成長の道筋を描けるようになる。

『これからの生き方』の書籍情報と購入方法は?

『これからの生き方――揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』
著:マーティン・セリグマン/ガブリエラ・ローゼン・ケラーマン
監訳・解説:徳吉陽河(一般社団法人コーチング心理学協会/一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会)

本書は研究者向けではなく実践者向けに書かれており、日常の臨床や職場での対話に活かせる内容です。監訳者による日本向けの解説もあり、読書会やグループ学習の教材としても使えます。好評発売中です。ご購入はAmazonなどで。

団体研修・法人研修について:当協会では、『これからの生き方』(Tomorrowmind日本語版)にもとづく研修(新入社員・中途社員・管理職研修など)を実施しています。協働での研修も可能です。詳しくはお問い合わせからご相談ください。

書籍『これからの生き方――揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(Tomorrowmind日本語版)の表紙
『これからの生き方――揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』好評発売中

研究からわかること(やさしい解説)

医療・看護職のバーンアウトやウェルビーイングについては、多くの研究が行われています。PRISMに関わる取り組みを、効果の目安とあわせて控えめにまとめました。

取り組み 効果の目安 教訓 現場での活かし方
ピアサポート・振り返りの場 効果:中 つらさを一人で抱え込まないことが、回復の支えになる。 看取りやインシデントのあと、短い振り返りの時間をチームでつくる。
レジリエンス・トレーニング(医療者向け) 効果:小〜中 短期の研修でも一定の効果はあるが、続けることが大切。 単発の研修で終わらせず、月1回の振り返りや練習を組み込む。
マインドフルネス 効果:小〜中 気持ちを落ち着ける土台になるが、続けやすさが鍵。 申し送り前の1分の呼吸など、業務に組み込める短い形で取り入れる。
仕事の意味や貢献を確かめる関わり(重要感) 効果:小〜中 仕事の意味を感じられることは、燃え尽きを防ぐ支えになりやすい。 面談で「最近、誰かの役に立てたと感じた場面は?」と問いかける。

効果の目安は、これまでの研究をまとめた結果をもとに「小・中・高」の3段階で表しています。効果には個人差があり、すべての人に同じように当てはまるわけではありません。

書き込みワーク:わたしの心の力を点検する

医療・看護の仕事を振り返りながら答えてみましょう。同僚や後輩と対話するときは「コーチモード」に切り替えてください。

入力内容はこの端末のブラウザにだけ保存され、外部には送信されません。

医療者の心の力を支える関わりを、講座で「できる」に

当協会が大切にしているのは、知るだけでなく「実際に実践できる専門家」を育てること。そして、技法の先にある、人としての関わり方=人間性のスキルを磨くことです。

後輩のつらさを受け止める傾聴、回復を引き出す問いかけ、貢献を伝えるフィードバック――こうした関わり方は、本で知るだけでなく練習してはじめて使えるようになります。『これからの生き方』に学ぶ講座やレジリエンス・カウンセラー養成講座では、PRISMやレジリエンスの考え方を、ペアやグループでの対話練習を通して身につけます。看護師などの国家資格と組み合わせることで、支援の幅が広がります。

「知っている」を「できる」に講義を聞くだけでなく、ペアやグループで実際に話して練習します。通信教育だけでは身につきにくい「使える力」を育てます。
傾聴+質問・提案・フィードバック心理的安全性を土台に、聴く力に加えて、質問する・提案する・伝える力までをセットで磨きます。
ポジティブ心理学を対話に活かす一般的なカウンセリングではあまり扱わない、強み・ポジティブ感情・希望などを関わりに取り入れます。
仕事と人生にそのまま使える職場の1on1、教育、医療・福祉、子育てなど、日常の場面ですぐ試せる形で学びます。

国際的な知見を、日本の現場に合わせて

当協会は、国際ポジティブ心理学会などで世界の研究と実践を学び続け、その知見を日本の職場・学校・家庭に合うよう調整して届けています(アダプティブ・アプローチ)。海外の資格や手法は、日本人への適応が十分に考えられていないこともあります。当協会は、その人の文化や物語を大切にするナラティヴ・アプローチも重視しています。アダム・グラントの「才能の科学(Hidden Potential)」やエンゲージメントなど、新しい視点からの研究と実践にも取り組んでいます。講座は連携団体の一般社団法人コーチング心理学協会と共催しています。

落とさない・潰さない・あきらめさせない

「すべての人にカウンセリングやコーチングのマインドと技術を」という方針のもと、再受講制度やフォローアップで、途中でつまずいても再挑戦できる仕組みを整えています。

このテーマとつながる講座

日程・料金は各講座の公式ページが最新です。ポジティブ心理カウンセラー協会とコーチング心理学協会の協働認定「認定ポジティブ心理学コーチ&認定ウェルビーイングコーチ(Wライセンス)」もあり、国際的な視点・ポジティブ心理学・実用性を取り入れたい方におすすめです。

参加の流れ

講座を選ぶ講座・イベント一覧から、テーマと日程を確認します。
申し込む各講座ページの申込ボタンから手続きします。
オンラインで参加自宅や職場からZoomで参加。体験・対話中心で学びます。
現場で試す学んだ問いかけや関わり方を、翌日から実践します。
認定・継続認定資格の取得や、関連講座でさらに深めます。

よくある質問(FAQ)

『これからの生き方(Tomorrowmind)』はどんな本ですか?
ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマンとガブリエラ・ローゼン・ケラーマンによる共著の日本語版です。不確実な時代を生き抜くための5つの心の力「PRISM」を提唱する、科学的根拠にもとづくウェルビーイングの実践書です。
医療・看護職に特におすすめの理由は?
医療現場はVUCAが非常に高い環境です。PRISMは、バーンアウトの予防、患者ケアの質、キャリアの持続、チームマネジメントなど、医療・看護職が日々直面する課題に応用できます。
PRISMのMattering(重要感)とは何ですか?
「自分の存在が誰かの役に立っている、意味がある」という実感です。仕事の意味を感じられることは、燃え尽きを防ぐ支えになりやすいと考えられています。
レジリエンスは「折れない心」のことですか?
いいえ。ストレスに鈍感になることではなく、苦しみや悲しみを受け止めながら、それでも前に進む回復力のことです。仲間の支えやピアサポートが大きな助けになります。
読むだけで実践できますか?難しくありませんか?
本書は研究者向けではなく実践者向けに書かれています。監訳者による日本向けの解説もあり、日常の臨床や職場での対話に活かしやすい構成です。
チームや職場で活用できますか?
はい。看護管理者・教育担当者・リーダーナースがPRISMを理解すると、スタッフのウェルビーイング支援、心理的安全性の高い職場づくり、後輩育成に活かせます。読書会の教材にも向いています。
忙しくても取り入れられる方法はありますか?
申し送り前の1分のチェックイン、勤務後の短い振り返り、「今日役に立てたこと」を一つ思い出す習慣など、業務に組み込める小さな形から始められます。
協会では『これからの生き方』について学べますか?
はい。『これからの生き方』に学ぶ講座や、レジリエンス・カウンセラー養成講座などで、PRISMやレジリエンスを対話の練習を通して学べます。
病院・施設向けの研修は依頼できますか?
はい。『これからの生き方』にもとづく研修を、新人・中途・管理職向けなどで実施しています。協働での研修も可能です。お問い合わせページからご相談ください。
講座はオンラインで受けられますか?
はい。Zoomを使ったオンライン講座が中心で、職場や自宅から参加できます。再受講制度などのフォローもあり、挫折せずに学び続けられるよう支えています。
燃え尽きや気分の落ち込みが続くときは?
眠れない、気分の落ち込みが続く、仕事に行くのがつらいといった状態が長引くときは、一人で抱え込まず、医師や公認心理師などの専門家に相談してください。

読んで終わりにせず、「できる」に変えてみませんか。
対話と体験で学ぶ、ポジティブ心理学のカウンセリング講座です。

従来の解説(全文)を読む

医療・看護職が今こそ読むべき一冊『これからの生き方(Tomorrowmind日本語版)』が

医療現場にもたらす5つの力とは?

― バーンアウト予防・レジリエンス・ウェルビーイングの実践書 ―

Tomorrowmindprf 1
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Tomorrowmindbooks

医療・看護の現場は、今この瞬間も誰かの命や生活に向き合い続けています。感染症の拡大、医療制度の改革、AIや医療テクノロジーの急速な進歩——そのような「不確実な時代」の中で、あなた自身のウェルビーイングは、守れていますか?

本記事では、ポジティブ心理学の第一人者マーティン・セリグマン博士と脳科学医学博士ガブリエラ・ローゼン・ケラーマン博士による共著『Tomorrowmind』の日本語版『これからの生き方』について、医療・看護職の皆さんにとって特別な意味を持つ理由を、具体的にご紹介します。

「患者さんのために頑張る自分自身」を、科学的に支える一冊——それが本書です。

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なぜ今、医療・看護職に『これからの生き方』が必要なのか

「助けてあげたい」のに、自分が限界——医療現場のリアル

毎日、患者さんや家族と向き合い、チームのために動き、学び続ける。医療・看護の仕事はそもそも非常に高い使命感と専門性を必要とする職業です。しかしその一方で、慢性的な人手不足、夜勤・長時間労働、命に関わる緊張感が積み重なり、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る医療従事者が世界的に増加しています。

日本においても、コロナ禍以降、医療職のメンタルヘルス問題は深刻化しており、「自分を犠牲にして患者さんを支える」という構造が多くの現場で続いています。

でも本当に問いたいのは、こういうことではないでしょうか。

「患者さんを支え続けるために、まず私自身が心の力を育てるには、どうすればいいのか?」

この問いに、ポジティブ心理学と脳科学の最新知見を融合させて答えるのが、『これからの生き方(Tomorrowmind)』です。

予測不可能な時代に求められる「心の力」とは

著者のセリグマン博士とケラーマン博士は、現代の職業人が直面する最大の課題として「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」を挙げます。医療現場はまさに、このVUCAが凝縮した環境です。

  • 新興感染症や未知のウイルスへの対応
  • 医療AIの導入・デジタルトランスフォーメーション
  • 診療ガイドラインや制度の急速な変化
  • チーム医療・多職種連携の複雑化
  • 患者・家族の価値観の多様化

 

これらすべての変化に柔軟に適応しながら、高い専門性と人間性を発揮し続けるために、本書が提唱するのが「PRISM(プリズム)」フレームワークです。

 

PRISMフレームワーク:医療・看護職が育てるべき5つの心の力

本書の核心は、変化の中でも繁栄するために必要な5つの心理的スキルを「PRISM」として整理した点にあります。以下の表は、各要素が医療・看護職の実践においてどのような意義を持つかを整理したものです。

 

PRISMの要素 医療・看護職への意義
 未来予想力(Prospection) リスク予測・キャリア設計・倫理的判断力の向上
 レジリエンス(Resilience) バーンアウト予防・逆境からの回復力強化
創造性(Innovation) 臨床判断の柔軟性・新たな課題解決アプローチ
つながり(Social Connection) 患者・チーム・組織との信頼関係の深化
重要感(Mattering) 使命感の再確認・職業的アイデンティティの強化

 

以下では、各要素を医療・看護の文脈でさらに詳しく解説します。

① 未来予想力(Prospection)――先を読む力で、ケアの質を上げる

「未来予想力」とは、まだ起きていない出来事を具体的にイメージし、柔軟に行動計画を立て直す能力です。これは「楽観的な夢想」ではなく、科学的に裏付けられた脳の認知スキルです。

医療現場での具体的な応用を考えてみましょう。急変リスクのある患者さんに対して、「今夜この状態が続いたら何が起きるか?」と先読みして早期介入する能力は、まさに未来予想力の発現です。また、自分のキャリアについて「5年後、この専門性を活かしてどのような場所で働いていたいか?」と能動的にイメージする力も、燃え尽きを防ぐ上で非常に重要です。

② レジリエンス(Resilience)――「折れない心」ではなく「何度でも立ち直る力」

医療・看護の現場では、患者さんの状態悪化、看取り、家族への説明困難など、精神的に負荷のかかる場面が日常的に存在します。本書でいう「レジリエンス」は、ストレスに鈍感であることではありません。感じた苦しみや悲しみをきちんと受け止めながら、それでも前に進む「回復力」のことです。

ケラーマン博士はBetterHelpの最高革新責任者として何十万人もの心理的支援の知見を集積しており、レジリエンスの神話(「強い人は傷つかない」「一人で乗り越えるべき」)を科学的に解体しています。医療現場では、ピアサポートや心理的安全性の高いチームづくりが、個人のレジリエンスを大きく高めることが明らかになっています。

③ 創造性(Innovation)――「いつも通り」に縛られない思考力

変化する医療現場では、既存のプロトコルや慣習だけでは対応しきれない場面が増えています。本書の「創造性」は、芸術的才能ではなく「問題の本質に新しい角度からアプローチする認知的柔軟性」のことです。

例えば、患者さんのQOL(生活の質)を向上させるために、従来の医療的アプローチに加えてナラティブ(語り)を活用するアプローチを取り入れることや、チームのコミュニケーションを改善するための新しいミーティング手法の導入など、日々の小さな工夫にこそ創造性は宿ります。

④ つながり(Social Connection)――「ケアの力」はつながりの中に生まれる

人間の脳は本質的に「社会的なつながり」を求めて設計されています。孤独や孤立は、喫煙と同程度の健康リスクをもたらすことが研究で示されています(米国公衆衛生局長官報告, 2023)。

医療・看護職にとって、この「つながり」の要素は二重の意味を持ちます。ひとつは患者さんや家族との治療的な関係性の構築。もうひとつはチームメンバーとの支え合い、管理職との信頼関係、そして自分を支える個人的なネットワークです。

本書では、職場での心理的安全性を高め、孤立を防ぐための具体的な行動原則が提示されており、看護管理者やチームリーダーにとっても実践的な指針となります。

⑤ 重要感・貢献感(Mattering)――「私の仕事は意味がある」という確信

「自分が存在していることで、誰かが助かっている」「この仕事をしていることで、社会が少しよくなっている」——そのような感覚を「Mattering(重要感・貢献感)」と呼びます。

バーンアウト研究の第一人者クリスティナ・マスラック博士の研究では、バーンアウトの最大の予防因子のひとつが「仕事の意味や価値を感じていること」であることが示されています。医療・看護職は本来、「人の役に立っている」という実感が非常に得やすい職業のはずです。しかし長時間労働や理不尽なストレスにさらされるうちに、その感覚が失われていく——これがバーンアウトへの入口です。

本書のMatteringの章は、日々の臨床の中で「自分がここにいる意味」を再発見するための、心理学的に根拠ある問いかけと実践方法を提供してくれます。

 

医療・看護職が『これからの生き方』を読むべき5つの理由

理由1:バーンアウトを科学的に予防できる

本書はバーンアウトの「症状への対処」ではなく、「構造的な予防」にフォーカスしています。個人の性格や根性論ではなく、脳科学とポジティブ心理学の知見に基づいて「燃え尽きにくい心の構造」を育てるための具体的なエビデンスベースドなアプローチが学べます。医療・看護職の継続的なキャリア形成を支える上で、これほど実践的な内容は他に類を見ません。

理由2:患者ケアの質が根本から上がる

自分自身のウェルビーイングが高まると、患者さんへのケアの質も向上します。これは「思いやりの疲労(Compassion Fatigue)」研究においても明確に示されています。消耗しきった状態で提供するケアよりも、自分自身の心の力が充実した状態で向き合うケアの方が、患者さんにとっても、医療従事者にとっても、はるかに良い結果をもたらします。

理由3:キャリアの長期的な持続可能性が高まる

日本の医療現場における離職率の高さは、慢性的な課題です。特に看護師の離職率は年間10〜12%前後で推移しており、その背景には職場環境の問題だけでなく「将来の展望が見えない」という不安も大きく影響しています。PRISMの「未来予想力」と「重要感」を養うことで、自分のキャリアを主体的に設計し、長期的に意欲的に働き続けるための基盤が育まれます。

理由4:後輩・部下のウェルビーイング支援に活用できる

看護師長、主任、教育担当者など、チームを率いる立場の方には特におすすめです。PRISMフレームワークは、部下のモチベーション管理や、困難な状況にあるスタッフのサポートに直接活用できます。「どんな言葉をかければ、相手の回復力が育まれるか?」「心理的安全性を高めるために、どんなミーティングの工夫ができるか?」——そのような問いへの答えが、科学的な根拠とともに本書から得られます。

理由5:変化の時代を「脅威」ではなく「機会」として捉え直せる

医療AI、遠隔診療、ロボット支援手術——テクノロジーの進化を「自分の仕事が奪われる脅威」として感じている方もいるかもしれません。しかし本書が提示するPRISMの視点からは、変化とは「新たな価値を生み出すための機会」として捉えられます。変化に適応しながら成長し続ける思考様式を科学的に身につけることで、不確実な未来を「恐れ」ではなく「探索」として迎えることができるようになります。

 

まとめ:「患者さんのために頑張る自分自身」を科学的に守る

あなたが健やかであることが、患者さんのための最良のケアへとつながります。

 

医療・看護の仕事に携わるすべての方へ。本書『これからの生き方』は、自己犠牲を美徳とするのではなく、科学的な根拠に基づいた「心の力の育て方」を提示します。

バーンアウトを予防したい方も、すでに疲弊を感じている方も、チームのウェルビーイングを高めたいリーダーも、キャリアに迷いを感じている方も——本書はあなたの職業人生に、新たな視点と具体的なツールをもたらしてくれるはずです。

「変化の激しい時代だからこそ、心の力が問われる。」この一冊が、あなたと患者さんの未来を、少しだけ明るく照らしてくれることを願っています。

 

『これからの生き方』

― 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力 ―

著:マーティン・セリグマン / ガブリエラ・ローゼン・ケラーマン 監訳・解説:徳吉陽河

一般社団法人コーチング心理学協会 / 一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会

 

よくあるご質問(FAQ)

  1. 『これからの生き方(Tomorrowmind)』はどのような本ですか?
  2. ポジティブ心理学の創設者マーティン・セリグマン博士と脳科学医学博士ガブリエラ・ローゼン・ケラーマン博士による共著の日本語版です。不確実な時代を生き抜くための5つの心の力(未来予想力・レジリエンス・創造性・つながり・重要感)「PRISMフレームワーク」を提唱しており、科学的根拠に基づいたウェルビーイングの実践書です。
  3. 医療・看護職に特におすすめの理由は?
  4. 医療現場はVUCA(不確実性・変動性・複雑性・曖昧性)が非常に高い環境です。本書のPRISMフレームワークは、バーンアウト予防、患者ケアの質向上、キャリアの持続可能性、チームマネジメントなど、医療・看護職が日常的に直面する課題すべてに応用できる内容となっています。
  5. PRISMフレームワークのMatteringとは何ですか?
  6. Matteringとは「自分の存在が誰かの役に立っている、社会に意味をなしている」という貢献感・重要感のことです。バーンアウト研究においてMatteringの低下が離職や疲弊の主要な予測因子であることが示されており、日々の業務の中で「自分がここにいる意味」を再確認するための科学的な方法が本書で学べます。
  7. 読むだけで実践できますか?難しくありませんか?
  8. 本書は研究者向けではなく、実践者向けに書かれており、各章に具体的なワーク・演習・問いかけが含まれています。忙しい医療・看護職でも無理なく取り組める構成となっており、日常の臨床や職場での対話にすぐ活かせる内容が満載です。監訳の徳吉陽河氏による日本向けの補足解説も充実しているため、翻訳特有の読みにくさもありません。
  9. チームや職場で活用することはできますか?
  10. はい、非常におすすめです。看護管理者・教育担当者・リーダーナースの方々がPRISMフレームワークを理解することで、スタッフのウェルビーイング支援、心理的安全性の高い職場づくり、後輩育成のコミュニケーション改善に直接活用できます。読書会やグループ学習の教材としても有用です。
  11. Q.一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では,「これからの生き方(Tomorrowmind日本語版)」に関する方法を学べますか?

    はい、当協会では,一般的な心理学,ポジティブ心理学などの視点から,進化心理学を全般的に行っています。科学的なエビデンスと物語のナラティブを活用して,より現代的な視点での進化心理学を学ぶ事可能です。おもに,レジリエンスカウンセラー講座などで開催しております。

    positive counselor

    Resiliencecounselor

    https://positive-counselor.org/event/resilience/



    Q.一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では,

    「これからの生き方(Tomorrowmind日本語版)」に関する実践を団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)

    はい,実施しております。多数の研修事例があります。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
    協働で研修なども可能です。

    https://positive-counselor.org/contact/

    コンテンツ一覧

投稿者プロフィール

一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会事務局
一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会事務局一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会
逆境や困難の中でも「希望」と「可能性」を見出し、自分らしく前向きに生きる人を育む、肯定的な心理学の専門機関。

公式ページ
https://www.positive-counselor.org/

イベント
https://www.positive-counselor.org/event/

協会概要
2013年に任意団体として設立され、2018年に一般社団法人化。ポジティブ心理学、コーチング心理学などを基盤に、個人や組織の成長、ウェルビーイング(幸福)の向上を目指す非営利団体です。諸外国の最先端の研究を取り入れつつ、日本人らしい「謙遜さ」や「誠実さ」といった価値観も尊重した、日本人に合ったプログラムを提供しています。

ミッションとビジョン
ミッション: 肯定的な心理学を活用した対人支援、社会支援、セルフケア、自己成長の普及。

ビジョン: 精神的な困難を未然に防ぎ、問題が生じても前向きに行動できる人材、そして周囲を「勇気づけ」できる人材を育成することで、より希望に満ちた社会を創造する。

実践的なワークショップ:

カードゲームや心理テストなど、体験・実践を重視した形式で、楽しく学べる場を提供。

「強み(ストレングス)」「レジリエンス(逆境力)」など、具体的なテーマに基づいた講座を多数開催。

学校、企業、福祉・看護など、様々な現場のニーズに合わせた研修プログラムを企画・開発・提供。

出版・普及活動、外部機関講演実績

特徴
実践重視のプログラム: 理論だけでなく、カードゲームなどを活用した体験型ワークショップが多く、すぐに実践できるスキルが身につくと評判です。

多様な心理学の統合: ポジティブ心理学を中心に、コーチング心理学やアドラー心理学、認知行動療法など、幅広い理論を統合した多角的なアプローチを学べます。

受講者の声(評判)
口コミでは、「実践的なワークが多く、思考が前向きに変わった」「日常生活にすぐ役立てられた」といった肯定的な評価が多数寄せられており、受講者の満足度は非常に高いです。特に、初心者でも学びやすい内容と、学習を通じて得られるポジティブな影響が好評を得ています。

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