監修:徳吉陽河(一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 代表理事/ポジティブ心理療法士,コーチング心理士,公認心理師,キャリアコンサルタント,認定心理士(心理調査))|最終更新:2026年10月2日
ポジティブハラスメント(ポジハラ)とは、「どんなに困難な状況でも前向きでいるべきだ」と、相手が望んでいないポジティブさを強要することです。良かれと思った励ましが、相手のつらい気持ちを否定し、心理的な圧迫を与えてしまいます。
- 問題は前向きな言葉そのものではなく、気持ちを受け止める前に押し付けること
- 対策の基本は「①受け止める → ②聴く → ③一緒に考える」の3ステップ。「幸せがわからない」という相談への関わり方も紹介しています
- 一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会は、ポジティブもネガティブも強要しない「心理的安全性」を、ポジティブ心理学の実践者の倫理として大切にしています。ポジティブ心理カウンセラーの役割は、強要ではなく、本人が希望や可能性に気づけるよう支えることです
こんな経験はありませんか?
- 落ち込んでいるときに「前向きに!」と言われて、かえってつらくなった
- 悩みを話したら「考えすぎ」「気にしすぎ」で終わってしまった
- 励ましたつもりが、相手が黙り込んでしまった
- 職場やSNSで「ネガティブなことは言ってはいけない」空気を感じる
どれも、だれかが悪意を持っているわけではありません。だからこそ、仕組みを知り、言葉の選び方を少し変えるだけで、関係は大きく変わります。
図解でわかるポジハラ|6コマで全体像をつかむ

① ポジハラとは
ポジティブな言葉や態度で、相手にプレッシャーや苦痛を与えること。「励ましのつもり」「ポジティブ思考」が、相手には重圧になることがあります。
② 無理な前向きさの押しつけ
「行き詰まってしまって…」に「大丈夫!前向きに考えれば必ずうまくいくよ!」──困難そのものが無視されてしまいます。
③ 感情の否定と笑顔の強要
「暗い顔をしていると運が逃げるよ!笑顔でいよう!」──不安や疲れを出せなくなり、無理に笑うことが負担になります。
④ なぜ起きるのか
1. 良かれと思って(無自覚) 2. 相手をコントロールしたい(無意識)。その背景には「共感の欠如」があります。
⑤ 防ぐ関わり方
相手の感情をそのまま受け止めることから。まずは共感・傾聴 → 相手の状態に合わせたサポート。「大変だったね。どうしたい?」
⑥ まとめ
1. 相手のつらい感情も大切にする 2. ポジティブさは強要しない 3. まずは「聴く」ことから始める。その先に安心感と成長が生まれます。
ポジティブハラスメントとは?|ポジティブのダークサイド
ポジティブな感情や考え方は、心と体の健康に役立つことが多くの研究で示されています。しかし、行き過ぎると「ダークサイド」もあります。光と影、すべての物事には2面性があります。
ポジティブハラスメントとは、「どんなに困難な状況でも人は常に前向きでいるべきだ」「ポジティブでなければいけない」と強要することです。相手が望んでいないことを強要すれば、それがポジティブな内容であってもハラスメントになることがあります。「幸せ」は、その人らしい選択です。押し付けられた幸福は、その人の幸福ではありません。
| 用語 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| ポジティブハラスメント(ポジハラ) | 相手が望んでいないポジティブさを、言葉や態度で強要すること | 「関わり方」の問題。職場・家族・教育・SNSなど対人関係の中で起こる |
| トキシック・ポジティビティ | どんな状況でもポジティブでいるべきだとする考え方や態度 | 「考え方・文化」の問題。自分自身に向くこともある |
| 健全な励まし | 相手の気持ちを受け止めたうえで、相手のペースで前を向けるよう支えること | 違いは「感情を受け止めているかどうか」 |
健全なポジティブ思考
- ネガティブな感情も受け入れる
- 相手の気持ちに共感する
- 現実的な解決策を考える
- 適切な距離感を保つ
ポジティブハラスメント
- ネガティブな感情を否定・抑圧する
- ポジティブ思考を強制・押し付ける
- 相手の状況を軽視する
- 感情の表現を制限する
なぜポジハラは起きるのか?|良かれと思うほど気づきにくい
善意から始まる
「元気になってほしい」という思いやりが出発点。だから、言う側も言われる側も気づきにくいのが特徴です。
前向きな人・優秀な人ほど
自分が乗り越えてきた経験があるほど、相手のネガティブな状態に共感しにくくなることがあります。
早く解決したい気持ち
相手のつらさを見ているのがつらく、気持ちを聴く前に解決策や励ましを急いでしまいます。
「幸せでなければならない」文化
職場のスローガンやSNSの空気が、ネガティブな感情を出しにくくします。協会がとくに注意すべきと考えるダークサイドです。

哲学者ソクラテスは「本当の賢者は、己の愚かさを知っている人」だと語りました。光もあれば影もあり、過ぎたるは及ばざるが如し。ポジティブの力を知る人ほど、そのダークサイドも理解しておくことが大切です。
日常でよく見られる具体例

| 場面 | ❌ 問題のある例 | ✅ 適切な例 |
|---|---|---|
| 職場 | 「失敗は成功の元だから、落ち込まないで」 「もっとポジティブに考えようよ」 「やればできるって!」 「幸せは選択です」 | 「辛い状況ですね。どうサポートできますか?」 「大変でしたね。話を聞かせてください」 「一緒に解決策を考えてみませんか?」 |
| 家族・友人 | 「くよくよしないで」 「気の持ちようだよ」 「もっと悪い人もいるんだから」 「考えすぎ!」 | 「そんな気持ちになるのは当然ですね」 「一人で抱え込まないでください」 「あなたの気持ちを理解したいです」 |
| SNS・オンライン | 「感謝の気持ちを忘れずに!」 「ネガティブな投稿はやめて」 「いつも笑顔でいよう」 「ポジティブバイブスオンリー」 | 真摯に話を聞く姿勢を示す 具体的なサポートを提供する 感情の表現を尊重する |
| 教育 | 「努力すれば必ず報われる」 「諦めたらそこで終わり」 「やる気の問題だ」 「前向きに頑張ろう」 | 個別の状況を理解する 具体的な改善策を一緒に考える 感情を否定せずに受け止める |
ポジハラが与える影響
ポジハラは、受け手の心・人間関係・からだに、次のような影響を与える可能性があります。
| 心への影響 | 人間関係への影響 | からだへの影響 |
|---|---|---|
| 自己肯定感の低下 感情の抑圧とストレスの増加 罪悪感や恥の感情 気分の落ち込みの悪化 不安の増大 |
信頼関係の悪化 コミュニケーションの回避 孤立感 相談できる相手の喪失 表面的な関係 |
慢性的なストレス 睡眠の乱れ 心拍数・血圧の上昇 心身の不調の悪化 |
※感情を抑えることやストレスが続くことと関連が報告されている影響をまとめたものです。個人差があり、すべての人に起こるわけではありません。
研究からわかっていること|国際的に始まった新しいテーマ
「トキシック・ポジティビティ(有害なポジティブさ)」は、近年、国際的に研究が始まっているテーマです。代表的な知見を、実践に役立つ形で紹介します。
測れる「傾向」になった
カナダの大学の研究で、トキシック・ポジティビティを測る尺度が開発されました。ポジティブさを押し付けて相手を「コントロール」しようとする側面があり、楽観性とは別のものであること、押し付けのフィードバックが受け手の気分を悪くすることが示されています。[1]
SNSでは連鎖する
SNS上の「見せかけのポジティブな投稿」は、見る人の比較を強め、見る人自身も「偽りの自分」を投稿しやすくなる連鎖が示されました。純粋にポジティブさを広めようとする投稿では、そうした悪影響は見られにくい傾向でした。[2]
感情を抑えると体は緊張する
感情を表に出さないよう抑えると、見た目は落ち着いていても、体の中ではストレス反応が高まることが示されています。[3]
セルフ・コンパッションが守る
自分に思いやりを向ける力(セルフ・コンパッション)は、ポジティブの押し付けによる気分の悪化をやわらげると報告されています。また、プログラムで高められることがランダム化比較試験で示されています。[1][4]
現場での活かし方:前向きな言葉の前に、「いまの気持ち」を言葉にしてもらう時間をとる。受け手側は、自分への思いやり(セルフ・コンパッション)を練習しておく。

寄り添う3ステップ|「励まし」を「支え」に変える
受け止める
「そう感じるのは自然なことですね」「大変でしたね」と、まず気持ちをそのまま受け止めます。評価やアドバイスはまだしません。
聴く
「いちばんつらいのはどこですか?」「いまはどんな気持ちですか?」と、相手のペースで話してもらいます。沈黙も大切な時間です。
一緒に考える
落ち着いてきたら「何かできることはありますか?」「次にどうしたいですか?」と、相手が選べる形で一緒に考えます。

【状況】上司が「失敗は成功の元!前向きにいこう」と声をかけたが、部下は黙り込んでしまった。
【関わり】「悔しかったですよね。いちばんつらかったのはどこですか?」とまず気持ちを聴き、落ち着いたところで「次に活かせそうなことを一緒に探しませんか?」と提案する。
【期待される変化】気持ちを受け止めてもらえた安心感から、自分で振り返りや次の行動を話せるようになる。
【状況】「次があるよ!」と励ましたら、部屋にこもってしまった。
【関わり】「悔しいよね。ここまで本当に頑張ってきたもんね」と受け止め、しばらくはそっと見守る。話したくなったときに聴く。
【期待される変化】気持ちを出せる安心感ができ、子ども自身のタイミングで次の目標を考えられるようになる。
対策法:「幸せがわからない」と言われたら|未知の可能性を開く対話
自分自身が「幸せがわからない」と感じている方は、幸せがわからないときの対処法(自分でできる8つのこと)へどうぞ。「幸せでなければいけない」という思い込みについては幸せにまつわる認知バイアスで解説しています。
「幸せとは何かわからない」「前向きになれない」──そう打ち明けられたとき、「幸せは自分で選ぶものだよ」「感謝すれば幸せになれる」と答えを渡してしまうと、それ自体がポジハラになります。ポジティブ心理カウンセラーは、わからないことをわからないまま受け止め、安心できる場をつくったうえで、本人が自分らしい価値観や幸せの手がかりに気づけるよう問いかけます。

「わからない」を受け止める
「私は幸せとは何かわかりません」という言葉を、否定も説得もせずにそのまま受け止めます。わからないのは、これから見つけていく余地があるということです。
安心できる場をつくる
「今はまだ、わからなくても大丈夫ですよ。まずは安心できる場から」。答えを急がせないことが、心理的安全性の土台になります。
小さな手がかりを一緒に探す
「それでも、少し自分らしい価値観や幸せにつながりそうなことはありますか?」。大きな答えではなく、小さな手がかりから可能性の扉を開きます。
そのほかに使える関わり方
「幸せがわからない」「前向きになれない」という相談には、ほかにも次のような関わり方があります。どれも答えを押し付けず、本人が自分で気づくことを大切にしています。
| 関わり方 | 問いかけの例 | ねらい・背景 |
|---|---|---|
| 「知らない」姿勢で聴く | 「〇〇さんにとっての幸せを、わたしも一緒に知りたいです。どんなところから話してみたいですか?」 | 支援する側が答えを持っているという立場をとらず、本人を自分の人生の専門家として尊重する(ナラティヴ・コラボレイティブなアプローチ) |
| 幸せの「ものさし」を広げる | 「楽しい・うれしいのほかに、ほっとする、意味がある、誰かとつながっている、と感じる時間はありますか?」 | 幸せは「楽しさ」だけではない。安らぎ・意味・つながり・成長など、ウェルビーイングの多様な側面に目を向ける |
| 例外を探す | 「この1週間で、少しでもましだった時間はありましたか?」 | うまくいっている小さな例外に注目し、そこにある本人の力を見つける(解決志向アプローチ) |
| スケーリング | 「今の気持ちを0から10で表すと? 1つ上がったら、何が変わっていそうですか?」 | 「幸せかどうか」の二択ではなく、小さな変化を具体的に描けるようにする(解決志向アプローチ) |
| 価値を明確にする | 「どんなときに『自分らしい』と感じますか? 大切にしたいことは何でしょう?」 | 気分ではなく「大切にしたいこと」を手がかりに、自分らしい方向を見つける(ACT:アクセプタンス&コミットメント) |
| 強みに気づく | 「これまで人から感謝されたことや、自然にできてしまうことは何ですか?」 | すでに持っている強みに光を当て、自分らしさの手がかりにする(強みのアプローチ・カードの活用) |
| 人生の物語をふり返る | 「これまでで、少しでも満たされていたと感じる場面を教えてください。そのとき何があったでしょう?」 | 過去の経験の中から、本人にとっての幸せの形を再発見する(ナラティヴ・アプローチ) |
| 小さな実験を決める | 「その手がかりを、今週どこかで少しだけ試すとしたら何ができそうですか?」 | 頭で答えを出すより、小さく試して感じてみる。結果よりも「試せたこと」を大切にする |
現場での活かし方:まず「わからなくても大丈夫」と伝え、表の中から相手に合いそうな問いを1つだけ選んで使ってみましょう。答えが出なくても、それ自体を否定しないことが大切です。
【状況】周りからは「前向きに考えて」と言われ続け、かえって焦りが強くなっている。
【関わり】「わからなくても大丈夫です」と伝え、焦りを十分に聴く。落ち着いたところで「仕事以外で、少しほっとできる時間はありますか?」と幸せのものさしを広げ、出てきた「人の話を聴いているとき」という手がかりから、強みと価値観を一緒に言葉にする。
【期待される変化】「幸せ=大きな夢」という思い込みがほどけ、自分らしい小さな手がかりから、次の一歩を自分で選べるようになる。
幸せがわからないときの対処法|自分でできる8つのこと
「幸せがわからない」と感じているのが、ほかでもない自分自身のときもあります。そんなときは、無理に答えを出そうとしなくて大丈夫です。次の中から、今の自分にできそうなものを1つだけ選んで試してみましょう。

① 「わからない」を認める
「幸せがわからない自分はダメだ」と責めずに、「今はわからない時期なんだ」とそのまま認めます。友人にかけるような言葉を自分にもかけてみましょう(セルフ・コンパッション)。
② 「幸せでなければ」を手放す
幸せを「探さなければ」「感じなければ」と力むほど、かえって遠く感じることがあります。「幸せを見つける」より「少し楽になる」を目標にしてみましょう。
③ まず心と体を整える
睡眠・食事・からだを少し動かすこと。エネルギーが足りないときは、幸せについて考える力も弱まります。答え探しは、体を整えてからで十分です。
④ 「ほっとした瞬間」を書き留める
寝る前に、今日「ほっとした」「嫌じゃなかった」ことを小さく書き出します。大きな喜びでなくてかまいません。小さな瞬間に気づく力が、幸せの手がかりになります。
⑤ 「少しましだった時間」を探す
つらい毎日の中にも、少しだけ楽だった時間があるはずです。そのとき「どこで・誰と・何をしていたか」をふり返ると、自分に合う条件が見えてきます。
⑥ 大切にしたいことを書き出す
「幸せかどうか」ではなく「どう在りたいか」を考えます。やさしさ、誠実さ、学ぶこと、人の役に立つこと――大切にしたい価値は、気分が晴れないときも進む方向を示してくれます。
⑦ 小さく試してみる
気分が上がるのを待つより、先に小さく動いてみます。散歩する、好きだった音楽を聴く、人に短い連絡をする。やってみて「どう感じたか」を観察するだけで十分です。
⑧ 比べるのを少し休む
SNSで見る「幸せそうな誰か」と比べると、自分の幸せが見えにくくなります。疲れているときは、見る時間を減らしたり、信頼できる人と直接話したりしてみましょう。
迷ったら、まずこの4ステップから
8つすべてを試す必要はありません。迷ったときは、「急がない → 集める → 言葉にする → 試して振り返る」の4ステップで考えると、自分に合う幸せの感覚を少しずつ育てていけます。

活かし方:「幸せにならなきゃ」と感じたら、「今日は少し楽になることを1つだけしよう」と目標を小さく言い換えてみましょう。
【状況】周りに「前向きに」と言われるたびに、幸せを感じられない自分を責めていた。
【実践】「わからない時期なんだ」と認め、まず睡眠を整えた。寝る前に「嫌じゃなかったこと」を1つ書き出すと、「朝のコーヒーの時間」「同僚との短い雑談」が続けて出てきた。
【変化】「自分は静かな時間と、人との小さなつながりを大切にしている」と気づき、それを少し増やす工夫から始められるようになった。
幸せにまつわる認知バイアス|「幸せでなければいけない」「人より幸せでなければいけない」
「幸せがわからない」苦しさの背景には、しばしば幸せについての思い込み(認知バイアス=考え方のくせ)が隠れています。とくに多いのが次の2つです。どちらも本人を苦しめるだけでなく、自分に向けば「セルフ・ポジハラ」、周りに向けば「もっと幸せそうにしなよ」というポジハラにつながります。
▶ 幸せの思い込みチェック(無料・12問)で、自分の考え方のくせを確かめる
| 思い込み | 心理学での呼び方 | 起きやすいこと | しなやかな言い換え |
|---|---|---|---|
| 自分は幸せでなければいけない | べき思考(認知行動療法)/絶対的な要求(論理療法) | 幸せを感じられない瞬間を「失敗」と受け取る。落ち込みに「落ち込んでいる自分はダメだ」という二重の苦しみが重なる | 「幸せな日もあれば、そうでない日もある。どちらも自然なこと。幸せを感じられたら、うれしいな」 |
| 他の人より幸せでなければいけない | 社会的比較(とくに上方比較)/勝ち負けの二分思考 | SNSなどで見る他人の「見せる幸せ」と自分の「ふだんの日常」を比べ、不足感が強まる。幸せが競争になり、人の幸せを素直に喜べなくなる | 「幸せは比べるものではなく、自分のものさしで味わうもの。比べるなら、昨日の自分と」 |
対処法①「幸せでなければいけない」をほどく
「ねばならない」に気づく
頭の中の「〜でなければ」「〜すべき」という言葉に気づいたら、「あ、べき思考が出てきた」と名前をつけます。名前をつけるだけで、考えと少し距離がとれます。
誰のものさしか確かめる
「その『ねばならない』は、誰と約束したものだろう?」「本当に、幸せでない日は許されないのだろうか?」と、やさしく問い直します。
「〜できたらいいな」に言い換える
「幸せでなければ」を「幸せを感じられたらいいな」に言い換えます。要求を願いに変えると、幸せでない日の自分も責めずにすみます。
対処法②「人より幸せでなければいけない」をほどく
見えていない部分を想像する
SNSや周りの人の幸せは、よい場面だけが切り取られていることが多いもの。「その人の、見えていない日常はどうだろう?」と考えてみます。
比べる相手を「過去の自分」に変える
他人ではなく、昨日の自分・1年前の自分と比べます。「前より少し楽になったこと」「できるようになったこと」を見つけると、比較が自分を支える材料に変わります。
自分の幸せのものさしを書き出す
「自分がほっとする・満たされるのはどんなとき?」を書き出し、他人の基準ではない自分だけの幸せの条件を言葉にします。比べて疲れたときは、SNSから少し離れる時間もつくりましょう。
活かし方:「〜でなければ」「〜より」という言葉が浮かんだら立ち止まり、「〜できたらいいな」「昨日の自分と比べると」に言い換える習慣をつくりましょう。
【状況】友人の「充実した休日」の投稿を見るたびに、「自分はもっと幸せでなければ」「みんなより劣っている」と感じていた。
【対処】「人より幸せでなければ」という比較のくせに気づき、見えていない部分を想像した。比べる相手を「子どもが生まれたばかりの頃の自分」に変え、自分がほっとできる時間(子どもと散歩する朝)を書き出した。
【変化】他人の投稿を「その人の一場面」として眺められるようになり、自分なりの小さな幸せを味わえるようになった。
ポジハラを受けたときのセルフケア
① 境界線を引く
「今は聞き流そう」と心の中で距離を置きます。
② 感情を認める
「辛いと感じるのは当然」と、自分の気持ちを肯定します。
③ いったん受け止める
相手の善意には「ありがとう」と受け止め、内容まで取り入れなくてよいと考えます。
④ 自分に優しく
セルフ・コンパッション:友人にかけるような言葉を自分にもかけます。
⑤ 信頼できる人に話す
気持ちを受け止めてくれる人との時間を大切にします。
⑥ 専門家を頼る
つらさが続くときは、カウンセリングなど専門家のサポートを受けましょう。
職場・組織でのポジハラ対策
「前向きに」が口ぐせの職場では、懸念やミスの報告が遅れ、不調の相談も届きにくくなります。ポジハラ対策は、心理的安全性(率直に話しても大丈夫だと感じられる状態)を高める取り組みそのものです。
ポジティブ心理カウンセラーの役割|強要ではなく、希望や可能性への「気づき」を支える
ポジティブ心理カウンセラーの役割は、ポジティブを強要することではありません。あくまでも、本人が自分の中にある前向きな希望や可能性に気づけるよう支えることに焦点を当てます。ときにはネガティブなことも吐き出してもらい、その感情に寄り添い、常に心理的安全性につなげます。そして、本人が安心感を持って前に進めるように心がけます。

吐き出してもらう
不安や怒り、悲しみなどのネガティブな気持ちも、否定せずに安心して話してもらいます。
例:「最近つらかったことを、順番は気にせず話してみませんか?」
寄り添う
「そう感じるのは自然なことですね」と、ネガティブな感情にそのまま寄り添います。急いで前向きにさせようとはしません。
例:「つらかったですね。まずは、その気持ちを大切にしましょう」
安心感をつくる
何を話しても大丈夫だと感じられる心理的安全性を、対話の土台として常に保ちます。
例:「ここでは正解よりも、安心して話せることを大切にします」
本人が気づく
質問を通して、本人が自分の中の強み・希望・可能性に自分で気づけるよう支えます。答えを押し付けることはしません。
例:「これまで乗り越えられたのは、どんな力があったからでしょう?」
前に進む
本人のペースで、安心感を持って踏み出せる小さな一歩を一緒に考えます。
例:「今週できそうな、いちばん小さな一歩は何ですか?」
| 観点 | ポジティブ心理カウンセラーの関わり | ポジティブハラスメント |
|---|---|---|
| ネガティブな感情 | 吐き出してもらい、寄り添う | 否定する・早く切り替えさせる |
| 前向きさ | 本人が自分で気づけるよう支える | 外から押し付ける |
| ペース | 本人のペースを尊重する | 支援する側が急がせる |
| 土台 | 常に心理的安全性を確保する | 「前向きでなければ」という圧力 |
| めざす姿 | 安心感を持って、自分の力で前に進める | 表面上だけ明るくふるまう |
【状況】「早く元気にならなきゃと思うほど、焦ってしまう」と話す。
【関わり】焦りや不安をまず十分に吐き出してもらい、「それだけ真剣に向き合ってきたんですね」と寄り添う。安心して話せる関係ができたところで、「これまでにつらい時期を乗り越えられたとき、何が支えになりましたか?」と問いかける。
【期待される変化】相談者が自分の中にある支えや強みに自分で気づき、「まずは短時間から試してみたい」と、自分のペースで前に進む一歩を選べるようになる。
ポジティブ心理学の実践者にとって、ポジハラを防ぐことは「倫理」であり、専門性の中心です。前向きさは、押し付けたときではなく、安心して自分で気づけたときに、その人の力になります。
ポジティブ心理カウンセラー協会の考え方
心に聴く、心に響く、心に効く
ポジティブ心理学は、「いつも前向きでいなさい」という学問ではありません。つらさや不安にも丁寧に目を向け、そのうえで、その人がもともと持っている強みや希望に光を当てる学問です。一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会は、国際的な研究にもとづくエビデンス(科学)、一人ひとりの経験を大切にするナラティヴ(物語)、日本の現場に合わせて生かすアダプティブ(適応)を重視しています。
多くの心理カウンセラー資格は傾聴が中心ですが、協会の講座では、心理的安全性を土台に傾聴だけでなく、質問・提案・フィードバック・伝え方までを学びます。「知っている」と「できる」は違うからこそ、ライブのワークやロールプレイで実践しながら身につけます。イラストや図を活用して、難しくなりやすい科学的な内容もわかりやすく学べます。
よくある質問
ポジティブハラスメント(ポジハラ)とは何ですか?
ポジハラとトキシック・ポジティビティの違いは?
ポジティブな言葉をかけることは全て悪いことなのですか?
ポジハラとただの励ましの違いは何ですか?
上司や先輩からポジハラを受けた場合、どう対応すればよいですか?
自分がポジハラをしてしまったことに気づいたら?
「幸せがわからない」と相談されたら、どう関わればよいですか?
自分自身が「幸せがわからない」と感じるときは、どうすればよいですか?
「幸せでなければいけない」「人より幸せでなければいけない」と思ってしまうのはなぜですか?
ポジティブ心理カウンセラーは、相談者にポジティブを求めるのですか?
ポジティブ心理学はポジハラを勧める学問ではないのですか?
職場でポジハラ防止に取り組むには何から始めればよいですか?
参考文献・関連記事
- Binns, R. (2023). How bright is the bright side? Measurement and implications of toxic positivity for self and others. Mount Allison University.
- Salopek, A. H., & Eastin, M. S. (2024). Toxic positivity intentions: An image management approach to upward social comparison and false self-presentation. Journal of Computer-Mediated Communication, 29(3), zmae003.
- Gross, J. J., & Levenson, R. W. (1997). Hiding feelings: The acute effects of inhibiting negative and positive emotion. Journal of Abnormal Psychology, 106(1), 95–103.
- Neff, K. D., & Germer, C. K. (2013). A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self-compassion program. Journal of Clinical Psychology, 69(1), 28–44.
- Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
- Mauss, I. B., Tamir, M., Anderson, C. L., & Savino, N. S. (2011). Can seeking happiness make people unhappy? Paradoxical effects of valuing happiness. Emotion, 11(4), 807–815.
「知っている」だけでなく「できる」に
寄り添う対話は、練習とフィードバックで身につきます。ポジティブ心理学を実践で学べる協会の講座をご覧ください。
