強みのマインドフルネス入門:ストレングス・マインドフルネス 認定資格取得の参考に
ここでは、強みのマインドフルネスに関して、探究・考察していきたいと思います。「強みのマインドフルネス」は、以下の講座などで実践しています。
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強みのマインドフルネスとは
強みのマインドフルネスとは、単に自分の強みを知っているだけではなく、
→ その瞬間ごとに「今、自分の強みをどう活かすか」に意識を向ける心の習慣 のことです。
ポジティブ心理学で強調される「強み活用」と、マインドフルネスの「今ここへの気づき」が融合した実践です。
*「強みのマインドフルネス」 の要素を、ポイントを整理した表でまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 自分の強みに意図的に気づき、今この瞬間に活かすこと。評価やジャッジを加えず、ありのまま受け止める態度。 |
目的 | – 自己理解を深める- 自然体でパフォーマンスを発揮する- ポジティブ感情を増やす |
ポイント | – 強みを「気づく」「言語化する」「活かす」の3ステップで捉える- 無理に強みを使おうとしない |
実践方法 | – 日常の中で「今、自分の強みを使っているか?」と問いかける- ジャーナリングで振り返る |
活かし方の例 | – 職場で「親切心」を活かし周囲をサポートする- 人との対話で「好奇心」を発揮する |
マインドフルな問い | – 今、どんな強みが自分に現れている?- この瞬間に自分らしさを表す強みは何か? |
効果 | – ストレス軽減- 自己肯定感向上- 人間関係の質向上 |
ストレングス・ベースド・マインドフルネス 構成要素

① 気づき(Awareness)
- 自分の強みに気づく
- Signature Strength(代表的な強み)・・・基本的なコアとなる強み
- Contextual Strength(場面による強み)・・・状況によって変化する強み
- 「今、自分はどの強みを使っているか」に意識を向ける
- 気づきの問い例:
- 「今の自分が発揮している強みは何だろう?」
- 「この状況で活かせる強みは何か?」
② 意図的な活用(Intentional Use)
- 無意識に使っていた強みを、意識して使う
- 必ずしも“全開”に使うのではなく、強さの“ボリューム調整”を意識する
例:
- 「リーダーシップを発揮するけど、支配的にはならないようにする」
- 「慎重さを活かすが、行動を止めない程度に使う」
③ コンテクスト(状況適合性)
- 強みは状況によって「使いすぎ」「使わなさすぎ」が起きる
- マインドフルネスで状況を客観視し、強みの使い方を選択する
例:
- 「周囲が疲れているなら、自分の熱意を少し抑えよう」
- 「緊張する場面だけど、ユーモアを少し使ってみよう」
④ 自然体・自己一致(Authenticity)
- 「こうしなければ!」ではなく、「自分らしく」強みを使う
- 人から期待される姿ではなく、内側の価値観に基づいた使い方
例:
- 「私らしさは優しさ。リーダーとして厳しくする場面でも、優しさを忘れない」
効果
✅ ストレス低減
✅ エネルギーの充実感が高まる
✅ 自己肯定感の向上
✅ 対人関係の改善
✅ レジリエンス(回復力)の強化
✅ 「仕事の意味」や「生きがい」の感覚が高まる
実践のポイント
● 朝のマインドセット
「今日はどの強みを意識して過ごしたい?」
● 強み日記をつける
- 今日使った強みは?
- どんな場面で役立った?
● 呼吸とセットで強みを思い出す
呼吸に意識を向けた後、自分の強みを思い出すとより定着しやすい
● 過去の成功体験を振り返る
「どんな強みを使ったからうまくいったのか?」を思い出すことで、自分の強みを自覚しやすくなる
例:ライアン・ニーミックの言葉
「強みをマインドフルに使うことは、最も自然体な“あなたらしさ”の表現である。」
この言葉の通り、強みのマインドフルネスは
→ 「自分らしくあるための実践」 です。
「強みのマインドフルネス」の 具体的な実践方法 をまとめました。
強みのマインドフルネス
具体的な実践方法
① 朝の「強み設定」ワーク
朝起きたら自分に質問:
- 「今日はどの強みを意識して使いたい?」
- 「どんな場面でその強みを活かせるかな?」
→ 一日の意図を決めるだけで、無意識に使いがちな強みが 意識的な選択 になる。
② 強み呼吸
- 静かに呼吸に意識を向ける(30秒〜1分)
- 吸うときに「自分の強み」を思い浮かべる
- 吐くときに「その強みを今日の行動に活かす」とイメージ
例)
吸う:「好奇心」
吐く:「相手に質問して深く聴いてみよう」
③ 「使った瞬間」メモ
その日、強みを使ったと思った瞬間をすぐにメモ。
メモ例:
- 「集中力を活かしてレポートを短時間で仕上げた」
- 「親切心で同僚をフォローした」
→ 書くことで自覚が深まる。
④ 日記に書く3つの質問
夜、日記に次の3つを書く:
- 今日使った強みは何か?
- どんな場面で使ったか?
- それをどう感じたか?
例)
「今日、ユーモアを使って会議の場を和ませた。自分らしくいられて嬉しかった。」
⑤ 5秒スキャン
何か行動する前に、たった 5秒 自分に問いかける:
- 「この場面でどの強みを使うと良さそう?」
例)
会議前 → 「慎重さ」or「勇気」?
難しい人と話す前 → 「思いやり」or「ユーモア」?
⑥ 過去の成功を振り返る
- 「過去にうまくいった場面はどんな強みを使ったか?」
- 「その強みを、今どんな場面で使えそうか?」
例)
「プレゼンが成功したのは好奇心で準備したから。次の打合せも活かそう。」
⑦ 他者に聞いてみる
信頼できる人に聞く:
- 「私の強みって何だと思う?」
- 「どんなときに活きてると思う?」
→ 自分では気づかない強みを発見できる。
対話ワークでの「強みのマインドフルネス」活用法
【STEP 1】 強みを思い出す
ワーク開始前に問いかける:
- 「今、どんな強みを自分の中に感じていますか?」
- 「今日はどの強みを意識して対話に臨みたいですか?」
例)
「今日は『好奇心』を活かして、相手に質問してみたい。」
→ 対話の目的を“強み”の軸でセットすることで、意識的に対話に入れる。
【STEP 2】 対話中の気づき
対話の最中に意識を向けるポイント:
- 「今、自分のどんな強みが発揮されているだろう?」
- 「相手の強みが見える瞬間はあったか?」
- 「この場面でどの強みを活かしたらいいだろう?」
例)
「相手が困っている様子。自分の『思いやり』を使って、少しゆっくり話を聴いてみよう。」
【STEP 3】 強みを使った問いかけ
対話を活性化する質問例:
自分への問い
- 「今の自分はどんな強みを使って話している?」
- 「もっと自然体でいられる強みは何だろう?」
相手への問い
- 「あなたらしさが一番出せた瞬間はどんなときですか?」
- 「その場面で使った強みは何ですか?」
- 「今日の対話で、どんな強みを活かしたいですか?」
【STEP 4】 終了時の振り返り
対話ワークの締めくくりに:
- 「今日、どんな強みを使えましたか?」
- 「強みを使ったとき、どんな気持ちになりましたか?」
- 「次に活かせそうな強みはありますか?」
例)
「今日は『分析力』を活かせたおかげで、話を整理できた。」
実際のワーク例
✅ ペア対話「強みインタビュー」
- 2人1組になる
- 質問する側はこう聞く:
- 「最近、うまくいったことは何ですか?」
- 「そのとき、どんな強みを使ったと思いますか?」
- 「それを今後どう活かしたいですか?」
- 交代して同じことを行う
→ 強みへの気づきが深まり、自然に「自分らしさ」への理解が高まる。
✅ 強みのジェスチャーゲーム
- 自分の強みをジェスチャーで表現
- 相手はどの強みか当てる
→ 楽しく、強みを言語化&身体化できる。
✅ 強みカード活用
- 強みのカードなどを使う
- 「今日の対話で使いたい強み」を1枚選び、胸に入れて対話に臨む
→ 意図的な強み活用を促す仕掛けになる。
ポイント
✅ 強みを意識することで、
- 対話に自分らしさが出やすくなる
- 相手の強みに気づきやすくなる
- ポジティブで安心感のある場が生まれる
「対話は、自分の強みと相手の強みが出会う場所」
🧘ウェルビーイングと強みのマインドフルネス
強いのマインドフルネスと7つのウェルビーイングの関係について表にまとめました。
多くの側面で関わりがあることがわかります。
ウェルビーイングの領域 | 強みのマインドフルネスとの関係 | 具体例 |
---|---|---|
主観的ウェルビーイング | 強みを意識的に使うことでポジティブ感情が増し、幸福感が高まる | 「親切心」を活かし感謝され、嬉しさや充実感を感じる |
心理的ウェルビーイング | 自己理解や自己受容が深まり、自己実現の感覚が高まる | 自分らしさを発揮できる場面を選び、自己効力感が増す |
社会的ウェルビーイング | 強みを活かすことで人間関係や社会的貢献の質が向上する | 「公平さ」を活かしチームの調和を保つ |
身体的ウェルビーイング | ストレス軽減や健康行動につながり、心身の安定を促す | 「自制心」を使い過剰な飲食や無理な生活を防ぐ |
スピリチュアルウェルビーイング | 自分の強みを通じて人生の意味や目的を感じやすくなる | 「希望」を活かし逆境にも意味を見出す |
キャリアウェルビーイング | 強みを活かすことで仕事にやりがいを持ち、成長意欲が高まる | 「学習欲」で新しいスキルを習得し、キャリア満足度が上がる |
経済的ウェルビーイング | 自分の強みを収入や経済的安定に活かすことで安心感を得る | 「計画性」を活かして貯蓄や投資を管理する |
🌿ウェルビーイングと強みのマインドフルネスの具体的な実践法
ウェルビーイング領域 | 強みのマインドフルネスとの関係 | 具体例 | 具体的な実践法 |
---|---|---|---|
主観的ウェルビーイング | 強みを意識的に使うことでポジティブ感情が高まり幸福感が増す | 「親切心」を活かし感謝され、嬉しさを感じる | ・日記に「今日使った強み」を書き出す・ポジティブ感情に気づく瞬間を深呼吸で味わう |
心理的ウェルビーイング | 自己理解や自己受容が深まり、自己実現感が高まる | 自分らしさを発揮できる場面を選ぶ | ・強みリストを作成し「今の自分に活かせるもの」を選ぶ・自己対話で強みに問いかける |
社会的ウェルビーイング | 強みを活かし他者との関係性や社会貢献の質が向上する | 「公平さ」を活かしチームの調和を保つ | ・会議前に「どの強みで貢献するか」意図する・相手の強みを見つけて伝える |
身体的ウェルビーイング | ストレス軽減や健康行動につながり心身の安定を促す | 「自制心」で生活習慣を整える | ・食事や運動の前に「自分の強みをどう活かせるか」問いかける・ボディスキャン瞑想 |
スピリチュアルウェルビーイング | 人生の意味や目的を強みを通じて感じやすくなる | 「希望」で逆境にも意味を見出す | ・瞑想時に「自分の強みは何のために使いたいか」問いかける・ビジョンボード作成 |
キャリアウェルビーイング | 強みを活かすことで仕事にやりがいを持ち、成長意欲が高まる | 「学習欲」でスキル習得に取り組む | ・週ごとに「仕事で使う強み目標」を設定・強みを活かした成功体験を振り返る |
経済的ウェルビーイング | 強みを収入や経済的安定に活かし安心感を得る | 「計画性」で貯蓄や投資を管理する | ・家計管理をする際「どの強みを活かすか」考える・目標額達成を強みで可視化する |
📈強みのマインドフルネスとエビデンス
最後に、学術的な点で、探究致します。
強みのマインドフルネス(Mindfulness of Strengths)は、マインドフルネスと個人の強み(キャラクター・ストレングス)を統合した新しいアプローチです。近年、この統合的な実践がウェルビーイングやストレス軽減、仕事や人間関係の向上に有効であることが、さまざまな研究で示されています。
強みのマインドフルネスの概念と枠組み
-
定義と特徴
強みのマインドフルネスは、マインドフルネス(今この瞬間への気づき)と、個人の持つ強み(例:勇気、好奇心、感謝、希望など)を意識的に活用する実践です。Mindfulness-Based Strengths Practice(MBSP)は、その代表的なプログラムで、8週間の実践を通じて強みの発見・活用とマインドフルネスの深化を目指します(Briscoe et al., 2016; Whelan-Berry & Niemiec, 2021; Alafia et al., 2024; Niemiec, 2023)。 -
理論的背景
マインドフルネスと強みは相互に支え合う関係にあり、両者を組み合わせることで、より深い自己理解や行動変容が促進されます(Ruch & Pang, 2019; Spinella et al., 2012)。
効果と応用
- ウェルビーイング・メンタルヘルス
強いのマインドフルネスや類似プログラムは、ウェルビーイング、人生満足度、ストレス軽減、抑うつ・不安の低減に有効であることが示されています(Briscoe et al., 2016; Whelan-Berry & Niemiec, 2021; Wang et al., 2023; Alafia et al., 2024; Arribas et al., 2023)。 - 仕事・組織での応用
職場での強みのマインドフルネスは、仕事満足度やパフォーマンス向上、ストレス低減に寄与します。マインドフルネス単独よりも、強みを組み合わせることで動機づけや実行力が高まる傾向があります(Ruch & Pang, 2019; Escartín et al., 2021)。
効果領域 | 強みのマインドフルネスの効果 | マインドフルネス単独の効果 |
---|---|---|
ウェルビーイング | 向上 | 向上 |
ストレス | 低減 | 低減 |
仕事満足度 | 向上 | 向上 |
パフォーマンス | 向上 | 効果小 |
実践上のポイントと課題
- 実践の工夫
MBSPでは、内向き(自己観察)と外向き(他者や社会への貢献)の両面から強みを活用します(Whelan-Berry & Niemiec, 2021; Niemiec, 2023)。 - 課題と今後の展望
研究は増加傾向にあるものの、サンプル数や長期的効果の検証が今後の課題です。教育、医療、家庭など多様な分野での応用が期待されています(Alafia et al., 2024)。
まとめ
強みのマインドフルネスは、マインドフルネスと個人の強みを組み合わせることで、ウェルビーイングやストレス軽減、仕事や人間関係の向上に効果的であることが示されています。今後さらに多様な分野での応用と、長期的な効果の検証が期待されます。
References
Briscoe, C., Ivtzan, I., & Niemiec, R. (2016). A study investigating the effects of Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP) on wellbeing. International Journal of Wellbeing, 6, 1-13. https://doi.org/10.5502/IJW.V6I2.557
Ruch, W., & Pang, D. (2019). The Mutual Support Model of Mindfulness and Character Strengths. Mindfulness, 10, 1545 – 1559. https://doi.org/10.1007/s12671-019-01103-z
Whelan-Berry, K., & Niemiec, R. (2021). Integrating Mindfulness and Character Strengths for Improved Well-Being, Stress, and Relationships: A Mixed-Methods Analysis of Mindfulness-Based Strengths Practice. International Journal of Wellbeing, 11, 38-50. https://doi.org/10.5502/IJW.V11I2.1545
Wang, Q., Zhu, Q., & Yang, S. (2023). Does mindfulness matter in the development of character strengths? A RCT study comparing mindfulness-based strengths practice and character strengths-based intervention. The Journal of Positive Psychology, 19, 900 – 921. https://doi.org/10.1080/17439760.2023.2257678
Alafia, J., Neelakantan, M., Kulandaiammal, R., & Hebert, H. (2024). Mindfulness-based strengths practice: a conceptual framework and empirical review of the literature. International Journal of Mental Health. https://doi.org/10.1080/00207411.2024.2348763
Ruch, W., & Pang, D. (2019). Fusing Character Strengths and Mindfulness Interventions: Benefits for Job Satisfaction and Performance. Journal of Occupational Health Psychology, 24, 150–162. https://doi.org/10.1037/ocp0000144
Niemiec, R. (2023). Mindfulness and Character Strengths. **. https://doi.org/10.1027/00590-000
Escartín, J., Monzani, L., Ceja, L., & Bakker, A. (2021). Blending mindfulness practices and character strengths increases employee well‐being: A second‐order meta‐analysis and a follow‐up field experiment. Human Resource Management Journal. https://doi.org/10.1111/1748-8583.12360
Arribas, B., Cataluña, D., Ruiz, A., & Nieto, J. (2023). Strengths-based Mindfulness: effects on mental health and well-being. Revista de Psicoterapia. https://doi.org/10.5944/rdp.v34i125.37235
Spinella, M., Niemiec, R., & Rashid, T. (2012). Strong Mindfulness: Integrating Mindfulness and Character Strengths. Journal of mental health counseling, 34, 240-253. https://doi.org/10.17744/MEHC.34.3.34P6328X2V204V21