「勇気づけ」と「褒める」の違いとは? アドラー心理学、ポジティブ心理学などの視点から比較



アドラー心理学とポジティブ心理学、ここでは、勇気づけと褒めるの違いについて独自に探究していきます。また、どのようにカウンセリングや日常生活でいかすかを探究・検討していきます。内容は、現状に合わせてアレンジ・調整を行っています。勇気づけとほめるに関しては、状況などに変化します。
ほめないよりは、ほめたほうが、前頭葉が活性化するなど、明らかに良い場合もございますので、その点、ご注意をお願いします。

講座の参加には、事前に知識があると理解が深まるため、情報公開し講座などでも利用できればと思います。とりわけ、よかったものは、講座等でも実践できればと思ます。また、講座では、紹介しきれなかった内容についても紹介し、フォローアップ致します。具体的には、以下の講座などで扱っています。勇気・勇気づけを実践されたい方は、おすすめです。自己肯定感、劣等感を前向きに支援するアプローチも採用しており、発達支援、人材支援の方にも最適です。

「勇気づけ」と「ほめる」の違い

アドラー心理学と一般的な心理学との比較は行われますが、ここでは別の視点でも検討しました。

「勇気づけ」と「褒める」の違いをアドラー心理学・ポジティブ心理学・コーチング心理学・一般心理学など、7つの心理学的視点で比較した詳細な表を作成しました。


✅ 勇気づけ vs 褒める:7つの心理学的視点からの比較表

 

心理学の視点 勇気づけ(Encouragement) ほめる(Praise)
1. アドラー心理学 他者比較のない承認。努力・存在・貢献への共感を通じて、共同体感覚と自己価値を育てる。 成績・成果に基づいた評価だけになりやすく、他者と比べられることによる不安や優越感を生みやすい。
2. ポジティブ心理学 VIA強みや意味の発見を重視。強みのフィードバックで自律性を伸ばす。 成功体験に基づく賞賛は一時的な効果。失敗時に自己価値が揺らぎやすい
3. コーチング心理学 クライアントの気づき・主体性・選択を引き出す支援。相手の内的資源に着目。 評価者の視点になると、コーチとクライアントの非対等性を強め、自己効力感を低下させることがある。
4. 教育心理学
(発達・学習)
自律性・内発的動機づけの支援。自己調整学習の促進 報酬依存型の行動になりやすく、「褒められないとやらない」傾向を助長。
5. 人間性心理学(ロジャーズ) **無条件の肯定的関心(Unconditional Positive Regard)**として、人の存在そのものへの承認。 条件付き承認となり、自己概念のゆがみや自己否定を引き起こす可能性あり。
6. 動機づけ心理学(SDT理論) 自律性・有能感・関係性の3要素(Deci & Ryan)を支える。勇気づけは内的動機の環境づくり。 外的報酬が中心となるため、内発的動機づけを阻害する場合がある(過正当効果)。
7. ナラティヴ・セラピー 個人の物語(ストーリー)に共感し、**「語りの変容」**を促す支援的対話。 褒めることはしばしば「外から与えられる評価」となり、物語の主導権が他者に移りやすい。

🔍 統合的なまとめ

比較項目 勇気づけ 褒める
動機づけの源 内発的(自己選択・内なる価値) 外発的(報酬・評価)
関係性 共感的・対等・支援的 評価的・上下・支配的になりやすい
心理的効果 自律性・自己効力感・長期的成長 一時的な満足・依存・不安定な自尊心
向いている場面 継続的な成長支援・関係性重視の支援 短期的なモチベーション喚起・パフォーマンス賞賛時

❗️ポイント:ここでの「ほめること」は、ただ、評価しているだけで、次の行動につながらいこと、または、アンダーマイニング効果などが考慮します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果(Undermining Effect)とは、もともと内発的に動機づけられていた行動が、外発的な報酬や評価によってやる気を失ってしまう心理現象です。日本語では「過剰正当化効果」とも呼ばれます。


🔍 具体的な例

  • 子どもが絵を描くのが好きだったのに、「上手に描けたらご褒美」と言われるようになると、報酬が目的になり、絵を描く楽しさが薄れる。
  • 社員が自発的に提案していた改善活動が、インセンティブ制度導入後「報酬のため」に変わり、報酬がないとやらなくなる。

🧠 心理学的背景

この効果は、**内発的動機づけ(興味・好奇心・やりがい)**が、**外発的動機づけ(報酬・罰・評価)**によって「上書き」されることで起こります。
1970年代にエドワード・デシ(Edward Deci)らの実験で明らかにされました。


✅ 防ぐための工夫

工夫 内容例
プロセスや努力を認める 「工夫したところが伝わってきたよ」など、結果より過程に注目する。
自己決定感を尊重する 「どうやってやるかは自分で決めていいよ」と選択の自由を与える。
内発的動機を言語化する支援 「なぜそれをやりたいと思ったの?」と問いかけ、本人の意味づけを促す。

🔁 対になる概念:エンハンシング効果

なお、例外もあります。外発的報酬が内発的動機を高める場合もあり、これを「エンハンシング効果」と呼びます。
たとえば、努力が認められたことでさらにやる気が高まるようなケースです。


エンハンシング効果(Enhancing Effect)とは、外発的な報酬や賞賛が、内発的動機づけを高める心理現象のことです。これは、アンダーマイニング効果(やる気を下げる)とは逆の現象です。


🔍 どういうときに起こるの?

たとえば…

  • 子どもが「親に褒められたい」と思って始めた英語学習が、やがて「英語って面白い!」と本人の興味に変わる。
  • 社員が「表彰されたい」と思って取り組んだプロジェクトが、途中から「この仕事にやりがいを感じる」と変化する。

つまり、外からのきっかけが、内側からのやる気に火をつけるのがエンハンシング効果です。


🧠 心理学的背景

  • 内発的動機づけ:好奇心・興味・やりがいなど、行動そのものが楽しい。
  • 外発的動機づけ:報酬・賞賛・評価など、外からの刺激で動く。

エンハンシング効果は、外発的動機が内発的動機を強化するという点で、教育・ビジネス・子育てなど幅広い場面で注目されています。


✅ 活用のポイント

工夫 具体例
努力や過程を褒める 「よく工夫してたね」「粘り強く取り組んでたのが伝わったよ」など
本人の意味づけを引き出す 「やってみてどうだった?」「どこが一番楽しかった?」など問いかけを活用
自律性を尊重する 「どう進めたい?」「自分で決めていいよ」など、選択の自由を与える

🔁 アンダーマイニング効果との違い

効果名 結果
アンダーマイニング効果 外発的報酬が内発的動機を下げる
エンハンシング効果 外発的報酬が内発的動機を高める

*アンダーマイニング効果、エンハンシング効果は、個人タイプや発達段階、役割や状況に応じて変化する可能性があるので、
よく相手を観察して対応し、良い方向性に進めるように立て直したり、より良い機会を与え、行動につなげることに焦点をあてます。

ほめること(評価のみ)に対する対策とは

各心理学的視点での「勇気づけ」と「褒める」ことへの懸念と、それに対応する具体的な対策(工夫)を整理しました。勇気づけの本質を保ちつつ、対人的な実践の中で陥りやすい落とし穴を避けるアプローチです。

視点 懸念点(褒めることのリスク) 勇気づけのための対策・工夫
アドラー心理学 他者比較による優越感・不安の助長 成果でなく努力・過程・貢献への共感を伝える。「あなたの丁寧さに助けられた」など共同体感覚を育む言葉を使う。
ポジティブ心理学 結果中心の評価は一時的であり、失敗時の自己価値低下を招く VIAの強みに基づくプロセス重視のフィードバックを行い、意味づけと言語化を支援する(例:「探求心が活かされたね」)。
コーチング心理学 評価者として上から見た関わりになると、非対等性を強めてしまう 問いかけ型の勇気づけで本人の気づきと選択を引き出す(例:「今、どんな力を使ったと思う?」)。また、努力・貢献プロセスを承認する。
教育心理学(発達) 報酬依存になると、自律的な学習動機が育たず「褒められ待ち」になる 結果よりも学びの姿勢や挑戦自体に注目して励ます(例:「工夫したところを聞かせて」など)。
人間性心理学(ロジャーズ) 条件付き承認は、自己概念のゆがみを生むリスク 存在そのものへの承認として、評価のない肯定的なまなざしや関心を持つ(例:「ここにいてくれて嬉しい」など)。
動機づけ心理学(SDT) 外的報酬ばかりだと、内発的動機を弱める(過正当効果) 自律性・有能感・関係性を支える言葉かけや環境づくりを行う(例:「自分で決めた工夫だったんだね」)。
ナラティヴ・セラピー 他者による評価が物語の主導権を奪い、自ら語る力を弱める 本人の語りを尊重し、問いかけで物語の変容を支援(例:「そのとき、あなたはどんな意味を見出したの?」)。

各理論の文脈で「勇気づけ」を深めることは、単なる言葉がけを超えて関係性の質の変容にもつながります。

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