3つのストレングス・アプローチの違い(コーチング・カウンセリング・セラピー) 認定資格取得の参考に
当協会の「ストレングスカウンセラー」講座では、「ストレングスセラピー」と「ストレングスコーチング」の活用も紹介しており、統合的に活用できるようにしています。ここでは、各ストレングスアプローチについて探究したいと思います。定期的に調整・追加致します。なお、このサイトの内容は、以下の講座で実施しています。
コンテンツ一覧
🧠 各ストレングス・アプローチの違い(比較表)
観点 | Strengths-Based Coaching | Strengths-Based Counseling | Strengths-Based Therapy |
---|---|---|---|
目的 | パフォーマンス エンゲージメント 目標達成 行動促進 自己強化 |
発達 自己理解 選択支援 自己成長主導 強みの開発 |
心理的回復 トラウマ克服 レジリエンス トラウマから成長 |
焦点 | 強みの「強化」と「活用」 | 強みの「発見・成長」 | 強みの「癒し・再構成」 |
関係性 | コラボレーター 伴走者 |
信頼関係、心理的安全性 | 信頼関係、治療・癒やし |
対象 | 健康な成人、リーダー、学生 | 思春期〜成人の多様な課題層 | トラウマ、うつ、不安など臨床レベル |
主な技法 | ポジティブフィードバック、GROWモデル、ビジョン設計 | ナラティブ探究、選択肢の整理、発達的支援 | ナラティブ再構成、認知再編、レジリエンス支援 |
文脈 | ビジネス、教育、キャリア | 学校、家庭、発達課題 | 医療、福祉、メンタルヘルス |
代表的な質問 | 「どんな場面で自分の強みが活かせそうですか?」
「目標達成をするために、どんな強みを強化できますか?」 |
「あなたが自分らしくいられる瞬間はいつですか?」
「どんな成功体験が自信につながりましたか?」 |
「あなたがこれまでに困難を乗り越えた経験には、どんな力が働いていましたか?」
「苦しい体験を通じて得た気づきはありますか?」 |
🌱 共通点
- すべて「人間の強み」に注目する
- 過去の成功体験や価値観を大切にする
- クライエントの主体性と可能性を信じる
- 「欠けているもの」ではなく「あるもの」に光を当てる
- 最終的には、クライエントが自らの強みを活かし、成長できるようにする
次に、3つのストレングスアプローチ(Strengths-Based Coaching / Counseling / Therapy)それぞれで活用できる質問を、目的別に整理しました。
✅ ストレングスアプローチ別|活用質問一覧表
目的/場面 | Strengths-Based Coaching(行動・成果) | Strengths-Based Counseling(自己理解・成長) | Strengths-Based Therapy(回復・意味づけ) |
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🔍 強みの発見 | 「最近“自然とできたこと”には、どんな力が働いていましたか?」 | 「自分らしさを感じた経験には、どんな特徴がありましたか?」 | 「過去の困難を乗り越えたとき、あなたのどんな力が働いていましたか?」 |
🌱 強みの活用 | 「その強みを、次にどんな場面で使えそうですか?」 | 「その資源をどう活かすと、日常がより楽になりますか?」 | 「その力は、今のあなたにとってどんな意味を持っていますか?」 |
🎯 目標・方向性 | 「その強みを使って、今後どんな目標に挑戦したいですか?」 | 「自分の価値観に沿った選択肢を増やすには、どんな工夫ができそうですか?」 | 「これから先、どんな自分で在りたいですか?その願いにはどんな強みが根づいていますか?」 |
🪞 自己肯定感の促進 | 「他の人があなたの強みを感じていた場面を思い出せますか?」 | 「“あのとき頑張った自分”に声をかけるとしたら、何と言いますか?」 | 「過去の痛みの中にあった、あなたなりの“希望の芽”に気づけますか?」 |
🎯 特徴の違い(補足)
アプローチ | 質問の焦点 | クライエントの状態 |
---|---|---|
Coaching | 未来/行動/実践的成果 | 健常で前進したい状態 |
Counseling | 現在〜未来/発達・選択支援 | 迷い・停滞・悩みの整理 |
Therapy | 過去〜現在/回復と意味づけ | 傷つき・トラウマの癒し |
ストレングスカウンセリング実施していて、よく聞かれるのは、強みがわからない。強みについて理解できない。強みの活用の仕方がわからないという意見が多いです。そのような際に活用できる質問をまとめました。
✅ 強みが「ない」と感じている人への前向きな質問とは?
日本人の場合、謙虚さ、能ある鷹は爪を隠すといった文化背景から、強みを理解しづらかったり、ポジティブなことや達成してしまったことは、当たり前と感じてしまうケースが多いですが、以下の質問が活用できそうです。
目的/状況 | 質問例 | 目的・意図(心理的効果) |
---|---|---|
🔍 経験を探る | 「最近、ちょっとでも“うまくいった”ことって何かありますか?」 | 小さな成功に光を当て、強みの種を見つける |
🌱 日常の工夫 | 「普段、なんとなく“これならできる”と思えることは何ですか?」 | 無意識の力や慣れた行動に強みを見出す |
💬 他者視点 | 「まわりの人は、あなたのどんなところに助けられていると思いますか?」 | 自分では気づきにくい強みを他者視点で認識する |
🎨 嫌じゃないこと | 「“得意じゃないけど嫌いじゃないこと”って何かありますか?」 | 抵抗感が少ない領域から資源の入口をつくる |
🌈 価値の探究 | 「どんなときに“自分らしさ”を感じたことがありますか?」 | 強みの代わりに「価値観」や「意味」からアイデンティティを探る |
🪞 自己の歴史 | 「これまで“頑張ったこと”をひとつあげるとしたら?」 | 成果でなく努力に焦点を当て、自己効力感を引き出す |
🔭 未来の姿 | 「もし今より少しでも気楽になれるとしたら、どんな状態だと思いますか?」 | 具体的な強みでなく「希望や感情」を起点にした問い |
🧭 質問のリフレーム | 「“強み”って特別な才能である必要はないとしたら、何がありそうですか?」 | 強みに対する思い込み(ハードル)を下げる |
「Strengths-Based Coaching」「Strengths-Based Counseling」「Strengths-Based Therapy」の3つのアプローチをメンタルヘルスの支援に活用する場合、それぞれの特性を活かしつつ、クライエントの状態・ニーズ・回復段階に応じた段階的な支援モデルとして統合することが効果的です。
✅ 3つのストレングスアプローチ × メンタルヘルス支援 活用表
アプローチ | 主な対象 | 活用タイミング | 主な役割 | 活用方法・介入例 |
---|---|---|---|---|
1. Strengths-Based Therapy(臨床・回復) | 心理的ダメージ、トラウマ、うつ・不安など | 危機〜回復初期段階 | 心の再建とレジリエンス形成 | ・過去の困難を乗り越えた力に光を当てる・CRB(FAP)やナラティブアプローチで自己再定義・“生き延びてきた力”を再発見 |
2. Strengths-Based Counseling(発達・自己理解) | 不安・迷い・停滞感、アイデンティティの揺らぎ | 回復後〜再出発段階 | 自己理解と価値の明確化 | ・成功体験や価値観から強みを再確認・「自分らしさ」と「やりたいこと」の接点を探る・選択肢を広げる意思決定支援 |
3. Strengths-Based Coaching(行動・成長) | 健康な状態だが、意欲や達成感が低い人働き盛りの層やキャリア不全 | 安定期〜成長促進 | 行動促進・自己実現 | ・強みを活かした目標設計とアクションプラン・リーダーシップ開発、燃え尽き防止・日常に強みを実装する「習慣化支援」 |
🔄 活用イメージ(段階モデル)
[ストレングス・セラピー] → [ストレングス・カウンセリング] → [ストレングス・コーチング]
過去の癒し・安全確保 自己理解・方向性の発見 行動と成長の促進
🎯 それぞれの効果的な問いかけ例
アプローチ | 質問例 |
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Therapy | 「今ここまで生きてこられた理由は、どんな力があったからだと思いますか?」 |
Counseling | 「どんなときに、自分らしくいられると感じますか?」 |
Coaching | 「あなたの強みを、次にどんな行動に活かせそうですか?」 |
🧠 統合のヒント
- クライエントの状態に応じてアプローチの段階を柔軟に移行することが重要です
- 支援者側が「セラピー・カウンセリング・コーチング」の違いと目的を整理しておくことで、無理なく“強み”を切り口に介入できます
- 全アプローチに共通するキーワードは:「リソース志向・希望・可能性・つながり」
📘 実際の応用場面
現場 | 活用法 |
---|---|
学校・教育現場 | 生徒のレジリエンス支援 → 自己理解 → キャリア意識の形成 |
職場・企業 | ストレス対処(メンタル不調者) → リエンゲージメント → パフォーマンス開発 |
医療・福祉 | 対人不安やうつ症状の軽減 → 自尊感回復 → 地域活動・仕事復帰支援 |
「リソース志向・希望・可能性・つながり」は、ストレングスアプローチ全体に共通する回復・成長・レジリエンスを支えるキーワードです。
以下に、それぞれの視点に対応する強みベースの質問法を整理してご紹介します。
✅ 「リソース志向・希望・可能性・つながり」に関わる強みの質問法
観点 | 質問例 | 意図・効果 |
---|---|---|
🧰 リソース志向(資源に目を向ける) | 「最近、“ちょっと助かった”と思えたもの・人・習慣はありますか?」「あなたにとって、困ったときに“支え”になるものは何ですか?」 | 外部・内部にすでにある“使えるもの”に光を当てることで、自己効力感を高める |
🌟 希望(先の可能性を信じる力) | 「もし今より少し良くなったとしたら、どんな状態になっていたいですか?」「“こうなっていたらいいな”と思う未来を自由に描くとしたら?」 | 抽象的な希望でも言語化することで、行動への方向性が生まれる |
🔓 可能性(変化の余地・伸びしろ) | 「これまで“できるとは思わなかったけど、できた”ことってありますか?」「“まだ見えていない自分の良さ”があるとしたら、それはどんな部分だと思いますか?」 | 既成の自己像を揺さぶり、「まだ見ぬ自分」を想像させるリフレーミング |
🤝 つながり(人との関係・支援・共感) | 「どんな人が、あなたの強みを引き出してくれると感じますか?」「誰かとの関係の中で、“自分らしくいられた”と感じたことはありますか?」 | 強みは「関係性の中で発揮されるもの」として、社会的文脈に焦点を当てる |
🎯 活用のヒント
- 強みの質問をする際は、「**できていないことを探す」のではなく「**すでにある小さな芽」を見つける意識が重要です。
- 特に「つながり」や「リソース」は、日本文化との親和性が高く、安心感・自己肯定感の土台になります。
- 「希望」や「可能性」は、無理に前向きにさせるのではなく、自然な未来志向を引き出す言葉選びがポイントです。
📘 例:4つの要素を活かした組み合わせ質問
💬「これまで、困ったときに助けになったもの(🧰リソース)って何かありますか?それをこれからどう活かせそうだと感じますか?(🌟希望)もしかしたら、まだ気づいていないあなたの強み(🔓可能性)もあるかもしれません。それを誰かと一緒に育てていくとしたら、誰と関わりたいですか?(🤝つながり)」
🌟 強みに関わる名言集(10選)
分野 | 名言 | 出典・人物 |
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💡 ポジティブ心理学 | 「強みを使うとき、人はもっとも自然体でいられる。」 | マーティン・セリグマン(心理学者) |
🧠 教育・発達 | 「強みに注目することが、弱みを乗り越える力になる。」 | ドナルド・クリフトン(ストレングスファインダー創始者) |
🌱 人間理解 | 「あなたの弱さを見つけるより、あなたの強さを見つける方がずっと価値がある。」 | カール・ロジャーズ(来談者中心療法) |
🌈 自己成長 | 「自分の中にある光に目を向けよう。」 | ネルソン・マンデラ |
💬 哲学 | 「人間の最も深い力は、自分の強みを自覚したときに発動する。」 | アリストテレス(解釈ベース) |
🧭 コーチング | 「強みは、自分が努力せずとも夢中になれる“自然な力”である。」 | マーカス・バッキンガム(『さあ、才能に目覚めよう』) |
💬 カウンセリング | 「強みとは、すでにあなたの中にある“使われるのを待っている力”である。」 | ミシェル・マクアダム(ナラティブ・カウンセラー) |
💼 ビジネス | 「最も成功する人とは、自分の強みに投資し続けた人である。」 | ピーター・ドラッカー |
🎨 創造性 | 「強みとは、“自然な自分”と“他者への貢献”が重なる場所である。」 | サイモン・シネック(『WHYから始めよ』) |
🧘 自己肯定 | 「あなたの光を恐れてはいけない。それはあなたの中の“ギフト”なのだから。」 | マリアン・ウィリアムソン |