ポジティブハラスメントとは ポジティブ心理学実践者の倫理を学ぶ。認定資格取得の参考に
ポジティブ心理学の実践家、ポジティブ心理カウンセラー、ポジティブ心理療法士としての倫理を学ぶ。
強要はせず、ほんとうの意味で、「心理的安全性」を確保する
「前向きに考えよう」は本当に良いこと?
たしかに、ポジティブな側面は、様々な健康においてエビデンスが認められています。
しかしながら、行き過ぎるとダークサイドもあります。
そこで、ポジティブ心理学の実践者、ポジティブ心理カウンセラー、ポジティブ心理療法士など方が学ぶべき特有の「倫理」について、
【ポジティブハラスメント】があります。ポジティブのダークサイドとも言える部分です。
光と影、すべての物事には、2面性があります。
実は、熱血的なポジティブな言葉の押し付けが、実は相手を傷つけてしまうことがあります。
科学的研究に基づいて、ポジティブハラスメント(ポジハラ)について理解し、適切な対応方法を学びましょう。
「幸せ」は、その人らしい選択です。押し付けられた幸福は重要ではありません。
とくに、「幸せでなければならない」というダークサイドが最も注意点と考えております。
「心無い」「もっとポジティブに」「きっと大丈夫」このような言葉が、時として相手を追い詰めてしまう可能性があります。
ポジティブハラスメントとは ポジティブ心理学実践者の倫理を学ぶ
ポジティブハラスメントとは? ポジティブのダークサイド
ポジティブな側面は、様々な健康においてエビデンスが認められていますが、行き過ぎるとダークサイドもあります。
ポジティブハラスメントとは、「どんなに困難な状況でも人は常に前向きでいるべきだ」「ポジティブでなければいけない」と強要することです。
すべてのことにおいて、相手が望んでいいないことを強要するとハラスメントになることがあります。
そのため、一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では、ネガティブはもちろん、ポジティブに関しても、けして、強要しないことが大切であると考えています。
あくまでも、ピンチはチャンス、ネガティブでも、自然に前向きなれるように洞察力・思考・行動・技術を習得できるように促すことに焦点を当てます。その人らしい、いくぶんかの「肯定的な幸福」や希望に焦点を当てて、一歩づつでも前に進められるような支援を目指しています。「心理的安全性」を重視し、自分で気づけるように、認識力、自己受容力を高め、安心して実践していきます。
ただ、知らず知らずのうちに、相手の心情を知らずに、ポジティブなハラスメントになってしまう可能性があり、それを認識し、防ぐことが大切と考えています。
特に、普段から前向きな方、優秀な方は、知らず知らず、相手のネガティブな状態について、共感できなくなってしまうケースもあります。
ポジティブハラスメントは、ネガティブな感情を否定し、常にポジティブでいることを強要する行為で、良かれと思って発せられる言葉が、実は相手の感情を無視し、心理的な圧迫を与えてしまう現象です。
哲学者 ソクラテス「本当の賢者は、己の愚かさを知っている人」だと語りました。我々は、賢者に離れないかもしれませんが、光もあれば影もあり、過ぎたるは及ばざるが如し、ポジティブのダークサイドをについても理解しておきましょう。
また、ポジティウハラスメントに関わる内容として、「トキシック・ポジティビティ」
「トキシック・ポジティビティ」とは、どんな状況でもポジティブでいることを強要する考え方や態度を指します。例えば、「落ち込むのは時間の無駄」「ポジティブに考えればすべてうまくいく」といった言葉が、時に相手のつらい気持ちを無視し、プレッシャーを与えてしまうことがあります。
ポジティブな思考はメンタルヘルスに良い影響を与えることもありますが、ネガティブな感情を否定しすぎると、ストレスを増やしたり、必要なサポートを受ける機会を失ったりする可能性があります。健全なポジティブ思考とは、ネガティブな感情も認めつつ、ゆっくり前を向いていくことをサポートする姿勢です。
ポジティブ心理学の実践者、ポジティブ心理療法士、カウンセラーは、まず、「心理的安全性」を確保して、安心した状態を促し、その人らしい支援を目指します。
健全なポジティブ思考
- • ネガティブな感情も受け入れる
- • 相手の気持ちに共感する
- • 現実的な解決策を考える
- • 適切な距離感を保つ
ポジティブハラスメント
- • ネガティブな感情を否定・抑圧
- • ポジティブ思考を強制・押し付ける
- • 相手の状況を軽視する
- • 感情の表現を制限する
日常でよく見られる具体例

職場でのポジハラ
❌ 問題のある例
- 「失敗は成功の元だから、落ち込まないで」
- 「もっとポジティブに考えようよ」
- 「やればできるって!」
- 「幸せは選択です」
✅ 適切な例
- 「辛い状況ですね。どうサポートできますか?」
- 「大変でしたね。話を聞かせてください」
- 「一緒に解決策を考えてみませんか?」
家族・友人との関係
❌ 問題のある例
- 「くよくよしないで」
- 「気の持ちようだよ」
- 「もっと悪い人もいるんだから」
- 「考えすぎ!」
✅ 適切な例
- 「そんな気持ちになるのは当然ですね」
- 「一人で抱え込まないでください」
- 「あなたの気持ちを理解したいです」
SNS・オンライン
❌ 問題のある例
- 「感謝の気持ちを忘れずに!」
- 「ネガティブな投稿はやめて」
- 「いつも笑顔でいよう」
- 「ポジティブバイブスオンリー」
✅ 適切な例
- 真摯に話を聞く姿勢を示す
- 具体的なサポートを提供する
- 感情の表現を尊重する
教育現場
❌ 問題のある例
- 「努力すれば必ず報われる」
- 「諦めたらそこで終わり」
- 「やる気の問題だ」
- 「前向きに頑張ろう」
✅ 適切な例
- 個別の状況を理解する
- 具体的な改善策を一緒に考える
- 感情を否定せずに受け止める
ポジハラが与える影響
心理的影響
- 自己肯定感の低下
- 感情の抑圧とストレス増加
- 罪悪感と恥の感情
- うつ症状の悪化
- 不安の増大
対人関係への影響
- 信頼関係の悪化
- コミュニケーションの回避
- 社会的孤立
- サポートシステムの喪失
- 表面的な関係性
身体的影響
- 慢性的なストレス
- 睡眠障害
- 心拍数・血圧の上昇
- 免疫機能の低下
- 心身症状の悪化
重要なポイント
ポジティブハラスメントは、良かれと思って行われることが多いため、
加害者も被害者も気づきにくいという特徴があります。
だからこそ、正しい理解と適切な対応が重要です。
トキシックポジティビティとは?
「トキシック・ポジティビティ」とは、どんな状況でもポジティブでいることを強要する考え方や態度を指します。例えば、「落ち込むのは時間の無駄」「ポジティブに考えればすべてうまくいく」といった言葉が、時に相手のつらい気持ちを無視し、プレッシャーを与えてしまうことがあります。
主要な研究結果
Binns研究(2023年)
マウントアリソン大学のBinns研究により、初めてトキシックポジティビティの測定尺度(BTPS)が開発されました。
- • トキシックポジティビティは測定可能な心理的構造
- • 「コントロール」と「ポジティビティ」の2つの側面 ・・・ ポジティブを強制的にコントロール(統制)しようとする傾向です。
- • 楽観性とは独立した概念であることを実証
- • フィードバック実験で負の影響を確認
Journal of Computer-Mediated Communication(2024年)
SNS上でのトキシックポジティビティの意図と影響を調査した大規模研究。
- • 5つの異なる投稿意図を特定
- • 上方比較による心理的影響を実証
- • 虚偽的自己表現の連鎖効果を発見
- • 善意的ポジティビティの保護効果
感情抑制の科学的影響 Gross & Levenson (1997)の研究により実証
うつ症状増加
認知機能低下:認知資源の消耗による集中力・記憶力低下
身体的影響:心拍数上昇、ストレスホルモン増加
セルフコンパッションの保護効果 ポジティブな強要に対してセルフ・コンパッションは有効
研究結果:セルフコンパッション(自分に対する思いやり)が高い人は、
トキシックポジティビティのフィードバックを受けても、気分の悪化が少ないことが実証されました。
セルフコンパッションの3要素
- • 自分への優しさ:自己批判の代わりに自分を労わる
- • 共通の人間性:苦しみは人間共通の体験と理解
- • マインドフルネス:感情を客観視し受け入れる
実証された効果
- • ポジハラの悪影響を緩和
- • レジリエンス(回復力)の向上
- • 精神的健康の改善
- • トレーニングで習得可能
実践的な対策法
個人レベルの対処法
受け手として(ポジハラを受けた場合)
①境界線を設定:「今は聞き流そう」と心の中で距離を置く
②感情を認める:「辛いと感じるのは当然」と自分の気持ちを肯定する
③感謝してみる:「一旦、受け止め、感謝してみる。」
④セルフコンパッション:自分に優しく、思いやりを持って接する
⑤信頼できる人に相談:理解してくれる人との時間を大切にする
⑥専門家のサポート:必要に応じてカウンセリングを受ける
発信者として(ポジハラを避けるために)
①まず傾聴:相手の感情や状況をしっかりと聞く
②感情を認める:「辛いですね」「大変でしたね」と共感を示す
③すぐさまの解決策の押し付けを避ける:すぐにアドバイスせず、相手のペースを尊重
④具体的なサポート提案:「何かお手伝いできることはありますか?」
⑤継続的なサポート:一回の会話で終わらず、長期的に支える姿勢
ポジティブハラスメントに対する対人関係レベルの対処法
コミュニケーション改善
- • 「I」メッセージで気持ちを伝える
- • 非言語コミュニケーションに注意
- • 相手の価値観を尊重する
- • オープンな対話の場を作る
健全な関係構築
- • 相互尊重の原則を確立
- • 感情表現の自由を認める
- • 多様性を受け入れる文化
- • 定期的な関係性の見直し
サポートネットワーク
- • 信頼できる人との関係強化
- • 多様なサポート源の確保
- • 専門家とのつながり
- • コミュニティへの参加
ポジティブハラスメントの組織レベルの対処法
教育・研修プログラム
ポジハラ理解研修:全職員対象の基礎教育プログラム
コミュニケーション訓練:適切な対話スキルの習得
管理職向け特別研修:部下への適切な指導方法
定期的なフォローアップ:継続的な学習と改善
制度・環境整備
- ガイドライン策定:ポジハラ防止の明確な指針
- 相談窓口設置:安心して相談できる体制
- 心理的安全性の確保:多様な感情表現を認める文化
- 定期的な組織診断:職場環境の継続的改善
ポジティブ・ハラスメント チェックリスト*
*研究中(あくまでも参考)
以下の項目をチェックして、あなた自身やあなたの周囲にポジティブハラスメントの兆候がないか確認してみましょう。
自分がポジハラをしていないかチェック
ポジハラを受けていないかチェック
チェックリスト結果の目安(あくま参考)
良好な状態です。現在の関係性を維持しましょう。
チェック1-4個:
チェックを付けた部分に関して、対策が必要です。一旦、コミュニケーション方法を見直してみましょう。
チェック5個以上:
チェックを付けた部分について対策が必要です。専門家への相談も検討してください。
よくある質問(FAQ)
ポジティブな言葉をかけることは全て悪いことなのですか?
いいえ、ポジティブな言葉自体が悪いわけではありません。重要なのは相手の感情を受け止めてから適切なタイミングで伝えることです。まず相手の気持ちに共感し、理解を示してから、必要に応じてサポートの言葉をかけましょう。
上司や先輩からポジハラを受けた場合、どう対応すればよいですか?
立場上直接指摘しにくい場合は、自分の心を守ることを最優先にしてください。「今は聞き流そう」と心の中で距離を置き、信頼できる同僚や人事部、外部の相談窓口に相談することをお勧めします。組織として対策が必要な場合もあります。
自分がポジハラをしてしまったことに気づいた場合、どうすればよいですか?
気づけたことが第一歩です。可能であれば相手に謝罪し、改めて気持ちを聞く機会を作りましょう。「先ほどは配慮が足りませんでした。あなたの気持ちをもう一度聞かせてください」のような言葉で、相手の感情を大切にする姿勢を示すことが重要です。
家族や親しい友人からのポジハラはどう対処すればよいですか?
親しい関係だからこそ、率直に気持ちを伝えることが大切です。「あなたは良かれと思ってくれているのは分かるけれど、今は辛い気持ちを受け止めてもらいたい」のように、相手への感謝も伝えながら自分の気持ちを説明しましょう。
ポジハラとただの励ましの違いは何ですか?
相手の感情を受け止めているかどうかが大きな違いです。健全な励ましは相手の気持ちを理解した上で行われますが、ポジハラは相手の感情を否定や軽視した上で一方的にポジティブさを押し付けます。相手の立場に立って考えることが重要です。
職場でポジハラ防止の取り組みを始めるには何から始めればよいですか?
まず現状把握のための匿名アンケートから始めることをお勧めします。その結果を基に、管理職向けの研修、全体向けの啓発セミナー、相談窓口の設置などを段階的に進めていきます。外部の専門家と連携することも効果的です。
参考文献・関連リンク
学術論文・研究
Binns, R. (2023). How Bright is the Bright Side? Measurement and Implications of Toxic Positivity for Self and Others. Mount Allison University.
Gross, J. J., & Levenson, R. W. (1997). Hiding feelings: the acute effects of inhibiting negative and positive emotion. Journal of Abnormal Psychology, 106(1), 95-103.
Journal of Computer-Mediated Communication (2024). Toxic positivity intentions: an image management approach to upward social comparison and false self-presentation.
Neff, K. D., & Germer, C. K. (2013). A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self‐compassion program. Journal of Clinical Psychology, 69(1), 28-44.
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