ウェルビーイング(Well-being)とは、一時的な気分の良さではなく、心身・人間関係・人生の意味などを含めて「良い状態」が持続していることを指す概念です。1946年のWHO憲章が「健康とは、病気でないことではなく、身体的・精神的・社会的に良好な状態」と定義したことを源流に、主観的幸福感の研究(ヘドニック)と、意味・成長を重視する研究(ユーダイモニック)の二つの系譜で発展し、セリグマンのPERMAモデルなどに統合されました。教育・経営・公共政策の目標概念としても世界的に使われています。
「幸せ」と訳しきれない言葉が、なぜ世界の教育・経営・政策の中心語になったのか。ウェルビーイングという概念の80年の歴史をたどります。
ウェルビーイングという言葉を世界の公式文書に刻んだのは、心理学ではなく公衆衛生でした。1946年に採択されたWHO(世界保健機関)憲章は、健康をこう定義します——「健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、身体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」。
「マイナスがないこと」と「良い状態であること」は違う。この一文は、半世紀後のポジティブ心理学の根本主張を先取りしていました。実際、1958年にはヤホダが「ポジティブ・メンタルヘルス」として精神的健康の積極的定義を試みています(関連記事「ポジティブ心理学の前史」)。
ウェルビーイングは流行語ではなく、1946年から国際機関の健康定義に組み込まれてきた概念である。
心理学のウェルビーイング研究には、古代ギリシャ以来の二つの幸福観に対応する、二つの大きな系譜があります。
快楽と意味は重なりつつも別物です。「楽しいが空虚な生活」も「苦労が多いが意味に満ちた人生」もありうる——二つの系譜を分けて考えることで、この違いを記述できるようになりました。
ウェルビーイングは一枚岩ではなく「感じる幸せ」と「意味ある生」の二重構造。両方を見ることが支援の解像度を決める。
2011年、セリグマンは二つの系譜を実践的に統合したモデルとしてPERMA(ポジティブ感情・エンゲージメント・関係性・意味・達成)を提唱します。感情(ヘドニック)と意味・関係・達成(ユーダイモニック)を一つの枠組みに収め、それぞれを測定・育成の対象にしました。
現在では、ウェルビーイングはさらに多面的に捉えられています。当協会でも、主観的・心理的・社会的・身体的・スピリチュアル・キャリア(職業的)・経済的という7つの側面からウェルビーイングを整理しています。教育のポジティブ教育、企業のウェルビーイング経営、国の幸福度指標——個人の内面の話だった「幸せ」は、組織と社会の設計目標になりました。この個人から社会への拡張は、ポジティブ心理学2.0・3.0の流れとも重なります。
ウェルビーイングの歴史は「気分→要素→多面的な設計目標」への発展史。だからこそ教育・経営・政策の共通言語になった。
概念の歴史を知ることは、支援の実務に直結します。相手の「幸せになりたい」を、感情の話なのか、意味の話なのか、関係や仕事の話なのかに切り分けて聴く。測れるもの(感情・満足度)は誠実に測り、測りにくいもの(意味・物語)は対話で扱う。当協会が掲げるEvidence × Narrative——科学的根拠と人生の物語の両方を大切にする支援は、ウェルビーイングの二重構造にそのまま対応しています。
ウェルビーイング支援を体系的に学ぶ枠組みは、特集「ポジティブ心理学の歴史と物語」と、当協会の認定資格講座で紹介しています。
一時的な気分ではなく、心身・人間関係・人生の意味などを含めた「良い状態」が持続していることを指す概念です。身体的・精神的・社会的な良好さを含む広い言葉です。
日常語の幸福は「感じる幸せ(気分・感情)」を指すことが多いのに対し、ウェルビーイングは感情に加えて意味・関係・健康・仕事など多面的な良い状態を含みます。幸福感はウェルビーイングの一部です。
国際的には1946年のWHO憲章の健康定義が大きな起点です。心理学では1980年代の主観的幸福感研究、1989年の心理的ウェルビーイング研究などを経て、2000年代のポジティブ心理学で中心概念になりました。
ヘドニックは快や満足という「感じる幸せ」に注目する系譜、ユーダイモニックは意味・成長・自律といった「よく機能する生」に注目する系譜です。古代ギリシャ以来の二つの幸福観に対応します。
本人の評価による幸福の指標で、人生満足度の高さ、ポジティブ感情の多さ、ネガティブ感情の少なさの組み合わせで測られます。ディーナーらが測定研究を体系化しました。
PERMAは、セリグマンが2011年に提唱したウェルビーイングの5要素モデルで、感情系(ヘドニック)と意味・関係・達成系(ユーダイモニック)を一つの実践的枠組みに統合したものです。
整理の仕方は複数ありますが、当協会では主観的・心理的・社会的・身体的・スピリチュアル・キャリア(職業的)・経済的の7つの側面で捉えています。相互に関連し合う多面的な概念です。
従業員のウェルビーイング(心身の健康・働きがい・人間関係など)を経営の目標・投資対象として位置づける考え方です。エンゲージメントや離職防止との関連から世界的に広がっています。
人生満足度尺度やPERMAプロフィラーなど多くの尺度があり、一定の測定は可能です。ただし意味や物語など数値化しにくい側面もあり、測定と対話を組み合わせることが勧められます。
できます。カウンセリング・コーチング・企業研修・教育などでウェルビーイング支援の需要が高まっており、当協会では認定ウェルビーイングカウンセラーなどの資格講座を提供しています。
ウェルビーイングを構成する5つの要素。セリグマンの「持続的な幸せ」のモデル。
「逆DSM」が与えた強みの語彙。6つの美徳・診断・活用と使いすぎ。
幸せの科学が「苦しみ」を取り戻すまで。ウォンの人生の二重性を歴史の文脈で。
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