PERMA(パーマ)とは、ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマンが2011年の著書『Flourish(ポジティブ心理学の挑戦)』で提唱した、ウェルビーイング(持続的な幸せ)を構成する5つの要素のモデルです。ポジティブ感情(Positive Emotion)、エンゲージメント(Engagement)、関係性(Relationships)、意味・目的(Meaning)、達成(Accomplishment)の頭文字をとっています。「幸福感」という一つの気分ではなく、それぞれ独立に測定でき、育てられる5つの要素として幸せを捉え直した点が画期的でした。
「幸せになりたい」は、目標としては漠然としすぎています。PERMAの価値は、その漠然とした願いを「今日から育てられる5つの要素」に分解したことにあります。
セリグマンは2002年の理論(オーセンティック・ハピネス)で、幸せを「快の人生・没頭の人生・意味の人生」の3つの道として描き、その中心に人生満足度=幸福感を置いていました。しかし2011年、彼は自らこの理論を批判します。人生満足度の測定値は回答時の気分に大きく左右されるうえ、「気分の良さ」を中心に置くと、没頭や意味のように気分としては現れにくい価値が軽視されてしまう——。
そこで彼は、中心概念を「幸福感」から「ウェルビーイング」へ切り替えました。ウェルビーイングは単一の実体ではなく、複数の要素からなる構成概念である。そして要素として認められる基準を3つ定めました。ウェルビーイングに寄与すること、それ自体のために追求されること、他の要素から独立に定義・測定できること。この基準を満たしたのがPERMAの5要素です。
PERMAは「幸せの言い換え」ではなく、幸福感一元論への自己批判から生まれた理論の作り直しである。
| 要素 | 内容 | 育て方の例(研究にもとづく実践) |
|---|---|---|
| P:ポジティブ感情 | 喜び・感謝・安らぎ・感動などの肯定的な感情体験 | 感謝日記(よかったこと3つ)、味わうこと(セイバリング) |
| E:エンゲージメント | 時間を忘れるほどの没頭(フロー) | 強みを使う機会を増やす、挑戦と能力の釣り合いを設計する |
| R:関係性 | 支え合える良好な人間関係 | 相手の良い知らせに積極的・建設的に応じる、親切の実践 |
| M:意味・目的 | 自分より大きな何かへの貢献・つながりの感覚 | 自分の強みを誰かのために使う、価値観と仕事を結び直す |
| A:達成 | 目標を追い、成し遂げる経験と有能感 | 具体的な目標設定、小さな達成の積み重ねと振り返り |
5つの要素は互いに関連しつつも独立です。たとえば没頭(E)の最中に気分の高揚(P)はほとんどありませんし、意味(M)は苦しい経験の中でも育ちます。「気分は晴れないが、意味と関係性は充実している」といった状態を記述できる——これがPERMAの実践的な強みです。測定には、各要素を測るPERMAプロフィラーなどの尺度が開発されています。
PERMAの5要素は「全部を一気に」ではなく「いま弱っている要素から一つずつ」。診断でなく設計の道具として使う。
PERMAは教育(ポジティブ教育)、職場のウェルビーイング施策、健康支援などで世界的に使われています。身体的な健康や活力を加えたPERMA-Hなどの拡張版も提案されており、当協会の講座でもウェルビーイング支援の基本枠組みとして扱っています。
一方で、学術的には「PERMAの5要素は主観的幸福感と結局どれほど違うのか」という測定上の議論も続いています。セリグマン自身、PERMAは最終決定版ではなく、ウェルビーイングの要素は研究とともに更新されうると述べています。実際、彼のポジティブ心理学はその後もポジティブ心理学2.0や未来予期(Prospection)研究へと動き続けています。モデルを「完成した真理」ではなく「現時点で最も使いやすい地図」として扱う——それがPERMAとの健全なつきあい方です。
PERMAは万能の公式ではなく、更新され続ける実用的な地図。だからこそ現場で使いやすい。
ポジティブ心理カウンセリングでは、PERMAを「幸せの採点表」ではなく対話の地図として使います。いま人生のどの要素が痩せていて、どの要素が本人の資源になっているか。問題の解決(マイナスをゼロへ)と並行して、どの要素から育て始めるか。5つの窓から人生を眺めると、「なんとなくつらい」が「関係性が痩せている」「意味を見失っている」といった、取り組める形に変わります。
PERMAの歴史的な位置づけは、特集「ポジティブ心理学の歴史と物語」の年表(2010年代)と関連記事「セリグマンとは」をご覧ください。
セリグマンが2011年に提唱した、ウェルビーイングを構成する5要素のモデルです。ポジティブ感情・エンゲージメント・関係性・意味・達成の頭文字をとっています。
ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマンが、2011年の著書『Flourish(邦題:ポジティブ心理学の挑戦)』で提唱しました。
幸福感は一つの気分として測られますが、PERMAは幸せを5つの独立した要素の集合(ウェルビーイング)として捉えます。気分に現れにくい没頭や意味も、独立の要素として評価できる点が違いです。
エンゲージメント(没頭・フロー)は、快の感情がなくても人生の充実を支える要素だからです。強みを活かす活動で生じやすく、成長のエンジンにもなります。
関係性(Relationships)です。支え合える良好な人間関係はウェルビーイングの最も強力な予測因子の一つとされ、「他者は大切である」というピーターソンの言葉に要約されます。
M(意味・目的)は「自分より大きな何かへの貢献・つながり」の感覚を指し、仕事のやりがいより広い概念です。家族・地域・信念など、仕事以外にも意味の源はあります。
各要素を測るPERMAプロフィラーなどの自己記入式尺度が開発されています。ただし測定をめぐる学術的議論は続いており、絶対的な採点表ではなく対話と設計の道具として使うことが勧められます。
PERMAに健康(Health)——睡眠・運動・食事などの身体的ウェルビーイング——を加えた拡張版です。教育や職場の実践で広く使われています。
5要素を窓として自分の生活を眺め、いちばん痩せている要素を一つ選んで小さく育てるのが基本です。例えばPなら感謝日記、Rなら良い知らせへの積極的な応答から始められます。
「なんとなくつらい」を「どの要素が痩せているか」という取り組める形に変える対話の地図として使われます。当協会のポジティブ心理カウンセラー®講座でも、ウェルビーイング支援の基本枠組みとして学びます。
WHO憲章から二つの系譜、PERMAへ。「良い状態」の80年史。
無力感の研究者は、なぜ幸福の科学を創ったのか。60年の歩みを一本の線で。
時間を忘れるほどの没頭を科学する。チクセントミハイの最適経験の心理学。
すべての記事の起点:特集「ポジティブ心理学の歴史と物語」
PERMAを対話の地図として使える人は、自分と誰かのウェルビーイングを設計できます。