一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会 > ポジティブ心理学を仕事とキャリアに活かす > 仕事で活かす15の工夫
明日から試せる形まで具体化しました。あわせて、 やってはいけない5つと、30日の始め方も掲載しています。
職場での活かし方は、①自分の回復と意味づけ、②人との関わり方、③職場の仕組みの 3つの層に分かれます。①から順に広げるのが確実で、③から始めると 本人が実感していない施策になります。ここでは各層に5つずつ、計15の工夫を示します。
ここを飛ばすと、あとの2層が続きません。自分が実感していない方法を人に勧めることになり、質問されたときに答えられないからです。
場面・頻度:1日の終わり、寝る前など決まった時間に5分
やること:その日にうまくいったことを3つ書き、それぞれに「なぜうまくいったのか」を一言添える。大きな成果でなくてよく、「昼に休憩を取れた」で十分。
なぜ効くと考えられるか:注意の向きは訓練で変わる。放っておくと未処理の課題に注意が集まるため、意図的に別の情報を拾う時間を作る。
注意:「よかったことがない日」に無理に書くと逆効果。その日は「持ちこたえた」と書いて終えてよい。
場面・頻度:週の終わり、10分
やること:自分の強みを3つに絞って書き出し、その週にそれが出ていた場面を1つずつ思い出す。出ていなかった週は、来週どこで出せるかを1つ決める。
なぜ効くと考えられるか:強みは持っているかどうかより、使えているかどうかで実感が変わる。職場での強み活用の介入では、個人資源への効果が比較的しっかり示されている。
注意:「強みがない」と感じる場合は、人からよく頼まれることを手がかりにする。
場面・頻度:調子がよいときに一度、15分
やること:「自分が消耗してくると最初に何が起きるか」を3つ書いておく。例:机が散らかる、返信が遅れる、人の話をさえぎる。調子が悪くなってからでは書けない。
なぜ効くと考えられるか:自分の状態は主観では測りにくい。行動という外から見える指標に変えておくと、早い段階で気づける。
注意:この3つが2つ以上そろったら、休むか人に相談する、という手順まで決めておく。
場面・頻度:四半期に一度、20分
やること:自分の業務を3つ挙げ、それぞれが最終的に誰にどう届いているかを書く。組織の理念ではなく、具体的な誰かの名前や場面で書くのがこつ。
なぜ効くと考えられるか:意味の感覚は、抽象的な理念よりも、実際の受け手が見えたときに立ち上がりやすい。
注意:無理に感動的な意味を作ろうとしない。「見つからない」という結果も情報になる。
場面・頻度:週に1回、5分
やること:その週にあったよい出来事を1つ選び、そのときの状況を細かく思い出す。人に話す、写真を見る、書くのいずれでもよい。
なぜ効くと考えられるか:よい出来事は放っておくと通り過ぎる。意図的に注意を戻すこと(サヴァリング)で、その経験から得られるものが増える。
注意:分析しようとしないこと。「なぜよかったか」を考え始めると、体験ではなく評価になる。
ここでの原則は、安心が先、可能性はそのあとです。つらさを十分に聴く前に資源の話をすると、話を切り上げられたと受け取られます。
場面・頻度:1on1・定期面談
やること:①近況(事実の確認)→②うまくいっていること→③次の一歩、の順に進める。特に②を飛ばさない。時間がないときは③を削って②を残す。
なぜ効くと考えられるか:面談が雑談か詰問のどちらかに寄りやすいのは、構成が決まっていないため。型があると、話す側も聴く側も迷わない。
注意:評価面談と同じ時間に行わない。評価が混ざると、②が「自己アピールの時間」になる。
場面・頻度:相談・面談・指導
やること:「いつもうまくいかない」と言われたときに、「少しでもましだったのはどんなときですか」と1つだけ尋ねる。
なぜ効くと考えられるか:解決志向アプローチの中核的な問い。問題の原因分析より、すでに起きている例外のほうが再現しやすいことがある。
注意:問題を十分に聴く前にこれを出すと、話を切り上げられたと受け取られる。順番を守る。
場面・頻度:日常のやりとり全般
やること:「すごいね」ではなく「あの場面で、全員の意見を一度整理してから進めていたね」と、起きたことを具体的に描写して返す。
なぜ効くと考えられるか:評価語は受け取りにくく、次に何をすればよいかも伝わらない。事実の描写は、本人が自分の行動を再現できる形で残る。
注意:描写した行動が、本人にとって望ましいものかは確認が必要。本人が苦しんでやっていることを称賛すると、やめられなくなる。
場面・頻度:指導・改善の伝達
やること:「昨日の資料、数値の出典が抜けていた(事実)/先方が確認に時間を使うことになった(影響)/次から出典を入れてほしい(依頼)」の順。
なぜ効くと考えられるか:人格ではなく行動に焦点が当たり、相手が防御的になりにくい。また、何を変えればよいかが明確に伝わる。
注意:ポジティブな内容ではさむ形(サンドイッチ型)は、本題がぼやけることがある。厳しい内容ほど、この3段階のほうが伝わる。
場面・頻度:相談・面談
やること:「話したくないことは話さなくて大丈夫です」と最初に伝える。沈黙を埋めようとしない。
なぜ効くと考えられるか:安心が確保されていない状態で開示を促すと、その場では話せても、あとで後悔と警戒が残る。
注意:この一言があるかどうかで、その後に本当に話せることが変わる。省略しない。
効果が最も長く続くのはこの層です。ただし、①②を経ていない人が制度だけを作ると、現場では「またなにか始まった」として消費されます。
場面・頻度:定例会議
やること:議題に入る前の2分、参加者が順に1つずつ「今週うまくいったこと」を話す。感想や評価はしない。次の人にすぐ回す。
なぜ効くと考えられるか:研修を1回やるより、日常の形式を変えるほうが長く続く。また、発言のハードルが低い話題から始めると、議題に入ってからも発言が出やすい。
注意:全員が話す形にすること。手を挙げる形式にすると、話す人が固定される。
場面・頻度:目標設定面談
やること:設定した目標に対して、「この目標を進めるうえで、あなたのどんな持ち味が使えそうですか」と1問だけ尋ね、答えを目標シートに書き残す。
なぜ効くと考えられるか:目標が組織から降りてきたものであっても、自分の資源との接点が言語化されると、進め方に裁量が生まれる。
注意:答えが出ない場合、目標設定そのものが本人と接続していない可能性がある。その情報こそが重要。
場面・頻度:業務設計・人事制度
やること:担当業務のうち、進め方・関わる相手・意味づけの3点について、本人が調整を申し出られる仕組みを作る(ジョブクラフティング)。
なぜ効くと考えられるか:ジョブクラフティングの介入研究では、ワークエンゲージメントと文脈的な成果への小さな正の効果が報告されている。
注意:負担を減らす方向だけの調整は、かえって活力を下げる可能性が指摘されている。挑戦を増やす方向の調整も選べるようにしておく。
場面・頻度:研修・勉強会
やること:終了前の5分で、各自が「明日から試すこと」を1つだけ書き、隣の人に伝える。1か月後に短い確認を送る。
なぜ効くと考えられるか:研修の効果が現場に移らない主因は、内容ではなく転移の設計の欠如。宣言と1か月後の確認だけでも、実行率は変わる。
注意:宣言を評価に使わない。評価と結びついた瞬間、無難な宣言しか出なくなる。
場面・頻度:研修・施策の評価
やること:満足度に加えて、行動(試したか)と状態(対象の指標)を、実施前・直後・1〜3か月後の3時点で測る。
なぜ効くと考えられるか:直後の満足度は、その後の変化をあまり予測しない。また、測ることが決まっていると、設計の段階から狙いが明確になる。
注意:測定結果を人事評価に使わないことを、参加者に先に明示する。使うのであれば、それも先に明示する。
ポジティブ心理学を職場に持ち込むときに、実際によく起きる失敗です。いずれも善意から起きるため、意識していないと避けられません。
始め方
いまの自分の層に合うものを1つだけ選んでください。初めての方は「1日3つ、うまくいったことを書く」が最も始めやすく、やめても損がありません。複数を同時に始めると、どれも2週間もたないのが実際のところです。
個人差が大きいですが、記録系の工夫は2週間ほどで注意の向きの変化に気づく人が多いようです。ただし、これは効果を保証するものではありません。2週間試して何も変わらなければ、その方法が自分に合わなかったというだけのことです。別のものを試してください。
回数を減らすのではなく、行う条件をより具体的にしてください。「毎日やる」より「歯を磨いたあとに1分だけ」のほうが続きます。また、続かない方法を意志の力で続けようとするより、続く形に変えるほうが合理的です。
自分の層の工夫は不要です。関わりの層(面談の構成など)は、自分が担当する範囲であれば通常は問題になりません。仕組みの層(会議の形式変更など)は、事前に目的と、やめる基準を共有しておくと進めやすくなります。
自分に使う
無理に探さないでください。「今日は持ちこたえた」と書いて終えてよいものです。むしろ、そういう日が続いているという記録のほうが、あとから見返したときに重要な情報になります。
「得意なこと」を探すとわかりにくくなります。「人からよく頼まれること」「やっていて苦にならないこと」から探してください。強み→仕事への変換ワークでは24の強みから選ぶ形になっているので、ゼロから考えるより選びやすくなります。
あらかじめ決めておいた手順を実行してください。その場で判断しようとすると、消耗しているときほど「まだ大丈夫」と判断しがちです。だからこそ、調子がよいときに手順まで決めておくことに意味があります。
使えます。ただし「意味を感じよう」とするのは順番が逆です。まず、具体的に誰にどう届いているかを事実として書き出してください。それでも見つからない場合、それは個人の心の持ちようではなく、役割や環境の問題である可能性が高く、別の検討が必要になります。
人に使う
開かせようとしないことが第一歩です。「話したくないことは話さなくて大丈夫」と伝え、こちらが先に不確実さを開示するほうが、結果的に話が出てきます。関係が育つ速度は、こちらの都合では決まりません。
違います。褒めるのは評価であり、上下関係を含みます。強みを返すのは、起きた事実の描写です。「すごい」ではなく「あの場面でこうしていた」と伝えるほうが、本人が自分の行動として再現できます。
使えます。むしろ、事実→影響→依頼の型は、厳しい内容ほど有効です。感情的な表現を避けつつ、変えてほしいことを明確に伝えられます。ポジティブな内容ではさむ形は、本題がぼやけることがあります。
その受け取り方には根拠があります。強みや前向きさの話が評価と結びついている職場では、当然の反応です。対話の目的が評価ではないことを、言葉だけでなく運用で示す必要があります。たとえば、その面談の内容を評価資料に転記しないと明言し、実際にしないことです。
職場・仕組み
この形式そのものを検証した研究は多くありません。ただし、発言のハードルが低い話題から始めることで参加のパターンが変わる、という考え方には根拠があります。試すコストが低いので、3か月やってみて発言者の分布が変わるかを見るのが実際的です。
負担を減らす方向だけの調整に偏らないことです。予防的な方向のクラフティングは、ワークエンゲージメントの低下と関連するという指摘があります。挑戦を増やす方向の選択肢も用意し、本人が選べる形にしてください。
測ること自体は有益ですが、測る前に「結果をどう使うか」を決めてください。使い道が決まっていない測定は、現場に「また調査か」という負担だけを残します。また、満足度は変化をあまり予測しないため、行動と状態の指標を併せてください。
注意と限界
あります。前向きさが規範になると、困っている人が声を上げにくくなります。また、強みの話が評価と結びつくと、本人が演じ始めます。本ページの「やってはいけない5つ」は、実際に起きやすい失敗をまとめたものです。
使わないでください。睡眠・食欲・起床などに継続的な支障が出ている場合は、産業保健や医療につなぐことが最優先です。心理教育や面談の工夫で対応しようとすると、必要な支援が遅れます。
そうとは限りません。研究上も効果量は小〜中程度で、全員に効くわけではないことが示されています。合わない方法を続けるより、別の方法に変えるほうが建設的です。詳しくはエビデンスのページをご覧ください。
本特集で扱った内容は、一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会の講座で体系的に、対話形式の演習を通して学べます。 1日の入門から参加でき、続けたい場合に資格認定コースへ進む形です。協会の資格は、国際的な研究知見を日本の職場・文化に合わせて取り入れるグローカルな専門性と、 時代のニーズを素早く講座にする機動性、協会独自の研究とアプローチを学べる点が特長です。 看護師・保育士・介護福祉士・キャリアコンサルタント・公認心理師などの国家資格と組み合わせることで相乗効果が生まれ、 次のキャリアの機会やキャリアチェンジにもつながります。受講で得られる実践経験や、同じ志をもつ人との交流・ネットワークは、お金だけでは買えない価値です。
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資格ガイド接遇・クレーム対応、支援職のセルフケア、管理職の1on1などを、組織の課題に合わせて設計する法人・団体研修も行っています。 費用はご予算を伺い、実施できる形をご提案します。
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